高級機械式時計の代名詞であるロレックス。暗闇で時刻を読み取るための夜光機能は、その実用性を象徴する重要な要素です。
しかし、お持ちのロレックスの針やインデックスが暗所で光らない、あるいは新品時と比べて発光が弱いことに気づき、「故障ではないか」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
結論から申し上げると、「ロレックスの夜光が光らない」という現象は、必ずしも故障を意味するわけではありません。その背景には、モデルが製造された年代と、時代とともに進化してきた夜光塗料の種類が深く関わっています。
古いヴィンテージモデルであれば、光らない状態こそが、その時計が辿ってきた歴史の証明となり、アンティークとしての価値を高めることもあります。一方で、現行モデルであれば、簡単な対処法で機能を回復できるケースがほとんどです。
本記事では、「ロレックスの夜光が光らないのはなぜ?」という疑問に対し、2025年9月現在の最新情報と専門的な知見に基づき、以下の点を徹底的に解説します。
- なぜ光らないのか:年代別の原因と簡単な見分け方
- 夜光塗料の進化史:トリチウムから現行のクロマライトまで
- 価値の判断基準:「光らない」状態がもたらすアンティーク時計の魅力
- 購入検討者への実用的なチェックリスト
この記事を通じて、夜光塗料に関する知識を深め、お手持ちのロレックス、あるいはこれから迎え入れる一本が持つ本質的な価値を見極めることができるようになるはずです。
- 夜光が光らない原因が故障ではなく年代と塗料の寿命であること
- 光らない古い夜光がアンティークとしての価値を持つ判断基準
- 現行の青いクロマライトの高い実用性と設計思想を理解できる
- 中古・ヴィンテージ購入時の真贋を見抜く専門的なチェック方法
なぜロレックスの夜光は光らない?原因は年代と塗料の進化にあり

- 「光らない」3つの原因と自宅でできる簡単な見分け方
- ロレックスの夜光塗料4種類の変遷と特徴
- 自宅でできる対処法と「光らない」状態の正しい見極め方
ロレックスの夜光が光らないと感じる背景には、単なる故障とは異なる、歴史的な要因と技術的な進化が存在します。現在のロレックスに使用されている夜光塗料と、過去に使用されていた夜光塗料では、その発光のメカニズムと寿命が根本的に異なります。この違いを理解することが、「光らない」原因の解明に繋がります。
主な原因は、古いモデル特有の「夜光塗料の寿命」か、現行モデルにおける「蓄光エネルギーの不足」、そして非常に稀ですが「水気による塗料の変質」の三つに大別されます。
「光らない」3つの原因と自宅でできる簡単な見分け方
原因1:古いモデルの「トリチウム夜光」が寿命を迎えた
ロレックスが1960年代から1990年代後半頃まで採用していたのが、トリチウム夜光です。これは、塗料自体に含まれる放射性物質(トリチウム)が崩壊する際に放出されるエネルギーを利用して発光する「自発光塗料」でした。
しかし、このトリチウムには半減期があります。トリチウムの半減期は約12.3年とされており、この期間で発光能力が半分に低下します。その結果、製造からおよそ25年を経過すると、実用的な発光能力はほぼ失われ、「光らない」状態となります。
これは塗料の正常な経年劣化であり、故障ではありません。もしお手元のロレックスが1990年代以前に製造されたモデルで、文字盤の6時位置付近に「T」や「SWISS – T<25」といった表記がある場合、このトリチウム夜光である可能性が極めて高く、「光らない」のは自然なことと判断できます。
トリチウム夜光の例(該当モデルの一部) |
サブマリーナー(Ref.16610の初期・U番以前など) |
エクスプローラーI(Ref.14270の一部) |
GMTマスターII(Ref.16710の一部) |
原因2:現行の「蓄光塗料」が光を蓄えられていない
1990年代後半以降、ロレックスは放射性物質を含まない「蓄光塗料」へと移行しました。現在使用されているクロマライト(および、その前に使われていたスーパールミノバ)は、太陽光や人工の光(蛍光灯など)のエネルギーを吸収し、それを蓄えることで暗闇で発光する仕組みです。
そのため、時計を長期間暗い場所に保管していた場合や、日中の光に十分に当てていなかった場合は、蓄えるべきエネルギーが存在せず、夜間に光らないという状況が発生します。
蓄光塗料が原因で光らない場合は、基本的に蓄光不足が疑われます。
💡ロレックスの蓄光時間 |
蓄光に必要な時間は、塗料の種類や光の強度によって異なりますが、明るい場所で数分~数十分光を当てるだけで、一時的な発光能力は回復します。夜光の発光が弱いと感じた場合は、まず明るい場所で光を当ててみるという簡単な対処法を試すことが重要です。 |
原因3:時計内部への水気・湿気による夜光塗料の変質(要警戒)
夜光塗料は、湿気や水分といった水気に非常に弱い性質を持っています。長年使用された時計では、リューズや裏蓋のパッキン(ガスケット)が劣化することで、時計内部に微細な水蒸気や水滴が侵入してしまうことがあります。
この水分が文字盤や針の夜光塗料に付着すると、塗料が変色したり、粉状に劣化したりして、本来の発光能力が永久的に失われてしまうことがあります。夜光が黒ずんでいたり、一部が変形しているように見える場合は、時計内部のコンディションが悪化している可能性があり、オーバーホールを含めた早急な専門店の診断が必要となります。精密機械であるロレックスにとって、水気の侵入はムーブメントの故障にも直結する大敵です。
ロレックスの夜光塗料4種類の変遷と特徴
ロレックスの歴史は、そのまま夜光塗料の進化の歴史とも言えます。安全性の向上と、より高い実用性の追求から、夜光塗料は大きく四つの種類に変遷してきました。
塗料の種類 | 使用年代(目安) | 発光の仕組み | 発光色 | 主な特徴と寿命 |
1. ラジウム | 〜1960年代初頭 | 自発光 | 緑色 | 強い放射能により現在は使用禁止。非常に希少。 |
---|---|---|---|---|
2. トリチウム | 1960s〜1990s後半 | 自発光 | 緑色 | 半減期約12年。光らないのが一般的。経年変化(パティナ)が価値に。 |
3. スーパールミノバ | 1990s後半〜2007年頃 | 蓄光 | 緑色 | 放射性物質不使用。蓄光能力が高いが、クロマライトよりも持続時間は短い。 |
4. クロマライト | 2007年頃〜現行 | 蓄光 | 青色 | ロレックス独自開発。長時間の持続力が特長。 |
1. トリチウム (Tritium):「光らない」ことが個性に
前述の通り、自発光塗料であるトリチウムは、発光の寿命が尽きていることがほとんどです。
経年変化(パティナ) |
トリチウム夜光が時間とともに劣化する際、塗料がクリーム色や山吹色に変化する現象を「トリチウム焼け」と呼びます。この色合いの変化は、一つとして同じものがなく、個体ごとの「味」としてアンティーク市場で非常に高く評価されています。 |
ロレックスの「トリチウム焼け」のないモデルがある? |
トリチウム焼けのないモデルは、光に当たらない暗所に保管されていたなど、非常に稀なコンディションといえますが、多くの場合、何らかの経年変化が見られます。 |
2. スーパールミノバ (Super-LumiNova):「蓄光」への転換期
1990年代後半、放射性物質を含まないスーパールミノバが導入されました。これは日本の根本特殊化学が開発した蓄光塗料であり、ロレックスだけでなく多くの高級時計メーカーで採用されました。
発光色と安全性 |
発光色は鮮やかな緑色であり、トリチウムのような放射能の心配がありません。 |
ロレックスのルミノバは焼ける? |
ルミノバは化学的に非常に安定しているため、トリチウムのように経年によって色が濃く「焼ける」ことはほとんどありません。 |
3. クロマライト (Chromalight):「青い輝き」が技術の証
2007年頃に登場したクロマライトは、ロレックスが独自に開発し、特許を取得した高性能な蓄光塗料です。
発光色の独自性 |
スーパールミノバの緑色に対し、クロマライトは深海のようなクリアな青色に光ります。この青色はロレックスの技術の証であり、現行のプロフェッショナルモデルの大きな特徴の一つです。 |
高い持続力 |
ロレックスの公式見解に基づき、クロマライトは一般的な蓄光塗料よりも持続時間が長く、「最大で約8時間」にわたり視認性を維持できるとされています。これはダイバーズウォッチなど、高い実用性が求められるモデルにおいて、大きな優位性となっています。 |
クロマライトはロレックス以外にある? |
このクロマライトはロレックス独自の技術であるため、基本的に他社の時計には使用されていません。 |
クロマライトの寿命 |
塗料自体の安定性が非常に高いため、トリチウムのように数十年で発光能力が失われることはありませんが、長年の使用や光の蓄積・放出のサイクルにより、蓄光能力がわずかに低下する可能性はあります。 |
自宅でできる対処法と「光らない」状態の正しい見極め方
夜光が光らないと感じた場合、まずは以下の手順で原因を見極めることが重要です。
1. 蓄光不足を確認する
UVライト(ブラックライト)を使用する: 自宅にあるUVライトを夜光部分に数秒〜数十秒当ててみてください。 |
⭕すぐに強く光る場合: 原因は蓄光不足であり、夜光塗料の機能に問題はありません。 ⚠️一瞬光ってすぐに消える場合: トリチウム夜光の寿命が尽きている可能性が高いです。 |
2. 専門店での修理:「塗り直し」の現実と価値への影響
もし蓄光してもすぐに光が消えてしまう、または古いトリチウムモデルで液漏れなどが疑われる場合は、プロのメンテナンスが必要です。しかし、特にアンティークモデルをお持ちの方は、修理方針について慎重になる必要があります。
ロレックスの夜光塗り直し(正規サービス) |
2025年9月現在、ロレックスの正規サービスでは、古い夜光塗料(トリチウムなど)の劣化した部分のみを修復したり、塗り直したりする対応は基本的に行っていません。原則として、夜光塗料が塗られた文字盤と針をセットで、現行の夜光塗料(クロマライトなど)が使われた新しい部品に交換する方針を取っています。 |
価値への影響 |
文字盤と針が交換されてしまうと、その時計は「オリジナル性」を失ってしまいます。特にトリチウム夜光のモデルは、オリジナルの文字盤や針が残っていることにアンティークとしての価値があるため、交換後の市場価値が大幅に下がる可能性を念頭に置く必要があります。 |
選択の二択 |
1. 実用性重視:夜光の機能を復活させたい、防水性も万全にしたい場合は、正規サービスでの交換を選択する。 2. 価値重視:時計のオリジナル性と将来のアンティーク価値を最優先する場合は、夜光が光らない状態をそのまま「歴史」として残すことを選択する。 |
ロレックスの夜光が光らない状態がもたらす付加価値と選び方

ロレックスの夜光が光らない原因がトリチウムの寿命にある場合、それは時計の機能的な欠陥ではなく、むしろアンティークモデルならではの大きな魅力へと変わります。高級時計の購入を検討する上で、この「光らない」状態が市場価値とどのような関係にあるのかを理解することは非常に重要です。
夜光の視認性の「色」と「用途」の関係
ロレックスの夜光塗料が、時代とともに緑色のスーパールミノバから青色のクロマライトへと変化したことは、単なる流行やデザインの変更ではありません。これは、ロレックスが最も重視する「実用性」を極限まで追求した結果です。夜光の色は、人間の目の構造と、時計が使用される環境、特に水中での視認性に大きく影響します。
1. 青色(クロマライト)の優位性
ロレックスが現行のプロフェッショナルモデル(サブマリーナー、ディープシー、GMTマスターIIなど)に青色発光のクロマライトを採用する主な理由は、水中や低光量下での透過率にあります。
水中での視認性 |
光は水中で吸収されやすい性質を持ちますが、青色(短波長)の光は赤色(長波長)の光よりも水中で遠くまで届きやすい特性を持っています。特にダイバーズウォッチは深海での視認性が命綱となるため、青色の発光は水中の暗闇で最も長く、クリアに認識できる色としてロレックスに選ばれました。 |
長時間の持続力 |
公式にも最長8時間の持続力を謳っているクロマライトは、青い光が「深海のようなクリアな輝き」として長時間安定して視認性を提供し続けることで、極限環境での実用性を保証しているのです。 |
2. 緑色(スーパールミノバ・トリチウム)の特性
過去に使用されていた緑色発光の夜光塗料(トリチウムやスーパールミノバ)は、一般的に空気中において人間の目が最も敏感に感知しやすい波長を持っています。
夜光の色に着目することは、その時計が本来どのような目的で設計され、どのような環境下で真価を発揮するのかという、ロレックスの設計思想を理解することに繋がります。
トリチウム夜光が持つ「パティナ」の希少性と市場動向(2025年最新)
トリチウム夜光が時間とともに劣化し、発光能力を失っていく過程で、塗料の色は美しいクリーム色や褐色へと変化していきます。この経年変化は「パティナ(Patina)」と呼ばれ、ヴィンテージロレックスの市場において最も評価される要素の一つです。
1. 個性が生み出す希少性
世界に二つとない色味 |
パティナは、個体ごとの使用環境や保管状況によって、焼けの度合いや色がすべて異なります。均一に美しく焼けたインデックスは、まさに世界に二つとない個性であり、これがコレクターズアイテムとしての価値を高める最大の理由です。 |
オリジナルの証明 |
そもそも光らないことが、その時計の文字盤や針が製造当時のオリジナル部品であることの証明にもなります。 |
ロレックスの「トリチウム焼け」のないモデルがある? |
トリチウム焼けのないモデルも存在しますが、市場では「均一に美しく焼けている」個体の方が、物語性を持つ個性として高く評価される傾向にあります。 |
2. 安定して高い市場価値(2025年最新動向)
2025年9月現在も、トリチウム夜光期のスポーツモデルは、コンディションの良いオリジナルダイヤルが、非常に高い水準で取引されています。
この「光らない」トリチウム夜光の魅力を理解することで、高級時計の購入検討者は、機能性(実用性)ではなく歴史と個性(価値)という、もう一つの重要な判断基準を持つことができます。
夜光塗料の文字盤表記(ダイヤルマーク)詳細:真贋と年代の判別

中古やヴィンテージのロレックスを購入する際、文字盤の6時位置に印字されているごく小さな文字は、その時計が使用している夜光塗料の種類と年代、さらには文字盤がオリジナルであるかを見極める上で決定的な情報となります。この表記は、夜光塗料が含む放射性物質の量を示すために設けられた国際的な基準に基づくものです。
年代別・夜光塗料の識別表記一覧
6時位置の表記 | 夜光塗料の種類 | 製造年代(目安) | 意味合いと特徴 |
T SWISS MADE T または SWISS-T<25 | トリチウム | 1960年代〜1990年代後半 | 「T」はトリチウム(放射線量25mCi以下)の使用を示す。光らないのが正常。 |
---|---|---|---|
SWISS MADE | スーパールミノバまたはクロマライト | 1999年頃〜現行 | 放射性物質を含まない蓄光塗料を使用していることを示す。現在の現行モデルの基本表記。 |
SWISS-T<25 (ルミノバ) | トリチノバ | 1998年〜1999年頃(移行期) | 表記はトリチウムだが、中身はルミノバが使われている稀少なモデル。 |
真贋判定におけるダイヤルマークの活用
中古市場でロレックスを選ぶ際、文字盤の表記がその時計の製造年と合致しているかを確認することは非常に重要です。
年代の矛盾 |
1999年以降に製造されたモデルなのにトリチウムの表記がある場合、文字盤が後から交換された可能性が浮上します。前述の通り、正規サービスでの交換は原則として現行品になるため、古い夜光表記の文字盤が使われている場合は、より詳細な調査が必要となります。 |
「トリチノバ」の判別 |
表記は「SWISS-T<25」なのにUVライトを当てて強く光る場合は、移行期のトリチノバダイヤルの可能性があります。真贋やオリジナル性を正しく判断するためには、夜光の光り方だけでなく、シリアルナンバーと文字盤の表記を必ずセットで確認する必要があります。 |
中古・ヴィンテージロレックス購入時の夜光チェックリスト
高級時計の購入を検討する際、夜光の状態を正しくチェックすることが、その時計の価値を見極める上で決定的な要素となります。
1. UVライト(ブラックライト)を使った確認法
UVライトは、夜光塗料が何であるか、そしてその夜光がオリジナルであるかを判断するための、最も強力なツールです。
夜光の種類 | UVライト照射時の反応 | 意味合いと判断 |
トリチウム (〜1990s後半) | 弱く、または一瞬光ってすぐに消える | オリジナルの夜光が残っている可能性が高い。 |
---|---|---|
蓄光塗料 (ルミノバ/クロマライト) | 強く発光し、持続する | 蓄光塗料が使われている。年代と塗料が合致するか確認が必要。 |
トリチウムモデルなのに強く光る | 強く発光し、しばらく持続する | 夜光が後から塗り直されている(リダン)可能性があり、オリジナル性は失われている。 |
2. 「ノン・ルミナス(Non-Luminous)」モデルの理解
ごく一部のヴィンテージロレックスには、夜光塗料を意図的に使用していないノン・ルミナスダイヤルが存在します。これは、当時の軍用や特定の用途のために作られた稀少な仕様であり、そもそも夜光が光らないのが正解です。光らないからといってすぐに不具合と判断するのではなく、そのモデルの歴史的背景まで調べて判断することが、高級時計購入者には求められます。
よくある質問(FAQ)

- ロレックスの夜光が光らないのは、必ず故障ですか?
-
いいえ、必ずしも故障ではありません。光らない主な原因は2つあります。
- 古いモデル(トリチウム夜光): 製造から約25年以上経過し、夜光塗料の寿命が尽きているためです。これは故障ではなく、アンティークとしての正常な経年変化です。
- 現行モデル(クロマライト): 蓄光不足で、光を十分に蓄えられていないためです。明るい光を当てれば一時的に回復します。
- 現行モデルの「クロマライト」は、なぜ青く光るのですか?
-
ロレックスが実用性を追求した結果です。青色は、水中や暗闇の環境で人間の目が最も長く、クリアに認識しやすい(透過性が高い)色であるため、特にダイバーズウォッチでの高い視認性を確保するために採用されています。
- 光らない古いロレックス(トリチウム夜光)は、価値がないのでしょうか?
-
むしろ逆です。光らない状態、またはインデックスがクリーム色に焼けているパティナ(経年変化)は、その時計がオリジナルであることの証明であり、アンティークロレックスの希少性として価値が高く評価されます。ただし、夜光塗料に欠けやヒビがないことが重要です。
- ロレックス正規サービスで夜光を光るように「塗り直し」はできますか?
-
正規サービスでは、劣化した夜光を部分的に「塗り直し」することは基本的に行わず、原則として文字盤と針をセットで現行の部品に交換します。これにより夜光機能は回復しますが、アンティークとしての「オリジナル性」は失われ、市場価値が大幅に下がる可能性があるため、ヴィンテージモデルの所有者は慎重な判断が必要です。
- 文字盤の「T」や「SWISS MADE」の表記は何を意味していますか?
-
6時位置のこれらの表記は、使用されている夜光塗料の種類を示す国際的な識別マークです。
- 「T」や「T<25」:トリチウム(自発光・寿命あり)を使用していることを示します。
- 「SWISS MADE」:スーパールミノバやクロマライト(蓄光・寿命なし)といった非放射性物質の夜光を使用していることを示します。
まとめ:ロレックスの夜光が光らない状態の真の価値と判断基準
- 光らない原因は古いモデルの夜光塗料の寿命である
- トリチウム夜光の寿命は約25年であり、故障ではない
- 現行モデルで光らない場合、ほとんどは蓄光エネルギーの不足が原因である
- 湿気や水気の侵入は夜光塗料の変質を招き、早急な修理が必要となる
- 古い夜光塗料の劣化は、パティナとしてアンティーク価値を高める
- トリチウムモデルでは、均一で美しいパティナが市場で高く評価される
- 現行のクロマライトは、ロレックス独自の高性能な蓄光塗料である
- クロマライトは青色に発光し、水中での高い視認性を誇る
- 正規サービスでは夜光の塗り直しは行わず、文字盤と針をセットで交換するのが基本方針である
- 正規サービスで交換すると、ヴィンテージモデルのオリジナル性が失われ価値が下がる
- 中古購入時にはUVライトで夜光の反応を確認し、オリジナルの夜光かを見極める
- 夜光塗料の種類は文字盤6時位置のダイヤルマーク(TやSWISS MADE)で判別できる
- 「T」表記はトリチウム、「SWISS MADE」は蓄光塗料の使用を意味する
- 購入モデルの製造年と文字盤表記の矛盾は、部品交換の可能性を示す
- 夜光への理解は、時計の実用性と歴史的価値の両方を見極める鍵となる
「ロレックスの夜光が光らないのはなぜ?」という疑問から始まった本記事ですが、その答えは、単なる不具合の有無に留まりません。
ロレックスの夜光塗料の歴史を紐解くことは、トリチウムという「過去」と、クロマライトという「現在」の技術的な優位性、そしてそれぞれの時代に製造された時計が持つ固有の価値を理解することに繋がります。
現行モデルであれば、青く長く光るクロマライトの性能を享受することで、夜間や水中での高い実用性を得られます。一方で、古いモデルであれば、光らないトリチウム夜光のパティナを、その時計の歴史と個性として受け入れることで、アンティークウォッチならではの奥深い魅力を堪能できます。
高級時計を選ぶ際は、ケースやムーブメントの性能だけでなく、ぜひ夜光塗料の種類と状態にも着目してみてください。夜光への深い理解こそが、その時計の真の価値と物語を見極めるための、重要な鍵となるでしょう。
ロレックス公式サイト