ロレックスをしばらく使わない時、
「止まったまま放置しても大丈夫なのか」「機械に悪影響はないのか」と不安に感じる方は少なくありません。
機械式時計はクォーツとは構造が異なり、使わない時間の過ごし方によって印象や扱い方が変わりますが、ロレックスは日常使用から長期保管までを想定して設計されている時計でもあります。
本記事では、ロレックス公式のケアガイドや時計業界で一般的に知られている技術的知見をもとに、「ロレックスを使わない時」に知っておきたい考え方や、保管・再使用時のポイントをわかりやすく整理して解説します。
結論として、ロレックスは使わない間に無理に動かし続ける必要はありません。
最新のロレックスは長時間のパワーリザーブと高い耐久性を前提に設計されており、短期間止まること自体は想定内の挙動です。大切なのは、止めるか動かすかではなく、「使わない時間をどう管理するか」という視点です。
- ロレックスを使わない時に動かす必要があるかの判断基準
- 使わない期間別に適した保管方法と注意点
- 止まったロレックスの正しい再始動と管理の考え方
ロレックスを使わない時の適切な保管方法|愛機を守る3つの鉄則

ロレックスを腕から外している時間は、時計にとって「次の出番に備える休息の時間」です。この時間をどのような環境で過ごさせるかによって、数年後、数十年後のコンディションに大きな差が生じます。
大切な愛機をトラブルから守り、その美しさと精度を維持するために、まず押さえておくべき「3つの鉄則」について解説していきます。
湿気・磁気・直射日光を避ける理想的な置き場所
機械式時計の内部には、極めて精密な金属パーツと、それらをスムーズに動かすための潤滑油が使われています。そのため、保管場所の環境管理はメンテナンスの第一歩と言えるでしょう。
特に注意すべきなのは、以下の3つの要素です。
湿気(錆とカビのリスク)
日本のように湿度が高い環境では、特に注意が必要です。パッキンで密閉されているとはいえ、リューズの締め忘れや経年劣化によって微量な湿気が侵入すると、内部パーツの錆や文字盤のカビの原因となります。洗面所や台所などの水回りはもちろん、結露しやすい窓際や、湿気がこもりやすいクローゼットの奥などは避けるのが賢明です。
磁気(精度の乱れ)
現代社会において、磁気は時計の精度を狂わせる最大の要因の一つです。スマートフォン、タブレット、PC、バッグのマグネット留め具、スピーカーなどは、目に見えない強い磁気を発しています。これらに時計を近づけすぎると、内部の「ひげゼンマイ」が磁気を帯び、時間が大幅に進んだり遅れたりする原因になります。保管する際は、これら電化製品から十分な距離を取り、直接近接させない場所を選ぶことが望ましいでしょう。
直射日光と温度変化(褪色とオイルの劣化)
直射日光に含まれる紫外線は、文字盤や針、ベゼルの褪色を引き起こします。また、直射日光が当たる場所は急激な温度上昇を招き、内部の潤滑油を酸化させたり、乾燥を早めたりするリスクがあります。温度変化が少なく、風通しの良い日陰が、時計にとって最もストレスの少ない環境です。
ロレックスの箱へのしまい方と日常のセルフケア

「使わない時は購入時の緑色の箱に入れている」という方も多いでしょう。純正のボックスは非常に堅牢で保護性能が高いですが、保管の際には少しだけ意識したいポイントがあります。
まず、時計を収納する前には必ずセルフケアを行いましょう。一日着用した時計には、目に見えない皮脂や汗、埃が付着しています。これらを放置したまま箱に密閉すると、メタルの腐食や汚れの固着を招きます。マイクロファイバークロスやセーム革のような柔らかい布で、ケース裏蓋やブレスレットの隙間を優しく拭き取る習慣をつけるだけで、数年後の輝きが驚くほど変わります。
また、ブレスレットの形状を保つために、専用のクッションに適度なテンションで巻き付けて収納することも大切です。あまりにきつく巻きすぎるとブレスレットに負荷がかかり、逆に緩すぎると箱の中で時計が動いて傷がつく原因になります。
もし純正の箱が大きすぎて日常使いに向かない場合は、高品質なウォッチケースや、公式サービス後に提供されるソフトポーチを活用するのも一つの選択肢です。これらは通気性が考慮されているものが多く、日常的な「休ませ場所」として非常に適しています。
公式サービス(サービスポーチ)保管
ロレックスの正規サービスでオーバーホールを受けた際、時計は専用の「サービスポーチ」に収められて返却されます。これは返却・持ち運び時の保護を主目的としたものであり、必ずしも長期保管専用のケースとして設計されたものではありません。
ただし、短期〜中期的に「使わない間の置き場所」として活用する分には実用上問題となるケースは少なく、直射日光や高温多湿、強い磁気を避けた環境であれば、純正ボックスや市販ケースと同様に扱うことができます。
長期間保管する場合は、サービスポーチ単体に頼るのではなく、湿度管理ができる引き出しやキャビネットと併用することで、より安定した保管環境を整えることができます。
長期間寝かせる場合に意識したい防水性の維持
数週間から数ヶ月、あるいはそれ以上の長期間ロレックスを使わない時に、最も見落とされがちなのが「リューズの状態」です。
ロレックスの代名詞である「オイスターケース」は、リューズを完全にねじ込むことでその防水性能を発揮します。保管時にリューズが緩んだままだと、そこから埃や湿気が侵入する隙を与えてしまいます。しまう前には、必ずリューズがしっかりと、かつ過度な力を入れすぎずに最後まで締められているかを確認してください。
また、長期間の使用・未使用にかかわらず、内部のゴムパッキンは経年によって徐々に劣化し、防水性能が低下することがあります。全く使わない時計であっても、数ヶ月に一度は状態をチェックし、リューズを操作してパッキンの固着を防ぐことが、将来的なトラブルを未然に防ぐことにつながります。
ロレックスは使わないと止まる?故障ではない理由と最新キャリバーの特性

「ロレックスは毎日動かしていないと壊れてしまうのでは?」という不安の声をよく耳にします。しかし結論から申し上げれば、2025年現在において、一般的な使用状態であれば、数日から数週間程度時計が止まっていること自体が、直ちに故障の原因となることはありません。
むしろ、現在のロレックスは「使わない時間」をより快適に過ごせるよう、ムーブメントの性能が飛躍的に進化しています。ここでは、最新スペックの活用法から、止まった際の正しい再始動の方法まで詳しく解説します。
最新「約70時間パワーリザーブ」なら週末放置も問題なし
近年のロレックスにおける最大の技術革新の一つが、新世代ムーブメント「32系キャリバー(Cal.3235、Cal.3230など)」の登場です。
かつての主要ムーブメント(31系)のパワーリザーブは約48時間でしたが、最新世代では約70時間へと大幅に延長されました。これにより、金曜日の夜に時計を外して土日をゆっくり休ませても、月曜日の朝にそのまま着けて出かけられるという、現代のライフスタイルに完璧にマッチする実用性を手に入れています。
ご自身の愛機が最新世代かどうかを知る一つの目安は、文字盤の6時位置、「SWISS MADE」の間に王冠マーク(エスケープメント・マーク)があるかどうかです。このマークがあるモデルは、従来世代よりも長いパワーリザーブを持つ設計であることを示しており、週末を挟んでも動作を維持しやすい傾向があります。もちろん、それ以前のモデルであっても、止まることを過度に恐れる必要はありません。ロレックスにとって「止まる」ことは、ゼンマイのエネルギーを使い切ったという正常な状態に過ぎないからです。
ロレックスのゼンマイの巻き方と止まった時の再始動
もし数日間の放置でロレックスが止まってしまったら、正しく息を吹き込ませてあげましょう。自動巻き時計は腕の動きでゼンマイを巻き上げますが、完全に止まった状態からでは、少し振っただけでは安定した精度が出ません。
公式サイトでも推奨されている正しい再始動の手順は以下の通りです。
- リューズのロックを解除する: 反時計回りに回して、リューズが手前にポンと飛び出す位置まで緩めます。
- 手動で巻き上げる: 時計回り(12時方向)に、ゆっくりと約20回〜40回ほど回してください。これによりゼンマイに十分なトルクが伝わり、精度が安定します。
- 時刻と日付を合わせる: リューズを引いて調整します。この際、深夜の特定の時間帯(午後8時〜午前4時頃)に日付調整を行うと機構に負担がかかるモデルもあるため、まずは針を6時付近に逃がしてから操作するのが時計愛好家の間での賢い作法です。
- リューズを確実に締める: 最後は軽く押し込みながら時計回りに回し、最後までしっかりとねじ込みます。これが防水性を守る最後の砦となります。
「ロレックスは一生使える時計ですか?」という問いに対する答えは、こうした「止まった時の正しい扱い」と「定期的なメンテナンス」の積み重ねの中にあります。
手巻きで何回まで巻いてよいのか、巻きすぎのリスクについては、
【結論あり】ロレックスのゼンマイは巻きすぎても大丈夫?自動巻きの仕組みと「30回巻き」の真実
で詳しく解説しています。
ワインディングマシーンはロレックスに必要?使わない時の設定値(TPD)目安

複数本の時計を所有している場合、常に時刻を合わせておける「ワインディングマシーン(ウォッチワインダー)」の使用を検討される方も多いでしょう。これにはメリットと注意点の両面があります。
メリットとしては、カレンダー調整の手間が省けること、そして内部の潤滑油が常に循環するため、長期放置による油の偏りを防げる点が挙げられます。一方で、常に動かし続けることは、機械的なパーツの摩耗をわずかながら進めるという側面も否定できません。
もしワインダーを使用する場合は、ロレックスのムーブメントに一般的に適するとされる回転数(TPD:1日あたりの回転数)と回転方向に設定することが、時計への負担を最小限に抑えるコツです。
| モデルカテゴリー | 目安とされるTPD(回転数/日) | 推奨回転方向 |
|---|---|---|
| 現行モデル(サブマリーナー、デイトジャスト等) | 約650 TPD | 双方向(両回転) |
| クロノグラフ(デイトナ等) | 800〜950 TPD | 双方向 / 時計回り |
| ヴィンテージモデル | 約600 TPD | 双方向 |
※上記のTPD(1日あたりの回転数)および回転方向は、ロレックス公式が数値として明示しているものではなく、複数の時計技師・メーカー・ワインダーメーカーが公表している一般的な目安を整理したものです。実際に必要な回転数は、個体差や巻き上げ効率、ワインディングマシーンの構造によって前後するため、常時フルに巻き上げ続ける設定は避け、必要最小限での運用を心がけてください。
【期間別】ロレックスを使わない時の管理シミュレーション(数日〜長期)

- 数日〜1週間:特別なツールなしで「自然体」で休ませる
- 数ヶ月〜:コンディション維持を優先した「定期的点検」を
- 1年以上〜長期:将来を見据えた「保管とオーバーホール」の計画
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
- 出典・参考情報
ロレックスを「使わない」と言っても、その期間は人それぞれです。ここでは、放置する期間に応じた最適なアクションをシミュレーション形式でまとめました。ご自身のライフスタイルに合わせて、愛機との距離感を測る参考にしてください。
数日〜1週間:特別なツールなしで「自然体」で休ませる
もっとも多いのが、仕事が休みの日だけ着用する、あるいは数日おきにローテーションするというパターンです。
- 推奨アクション: 専用のケースや純正ボックスに収めるだけで十分です。
- ポイント: 最新の32系キャリバーであれば、約3日間(70時間)は動き続けます。もし止まってしまったとしても、着用する際にリューズで軽く巻き直すだけで、一般的には精度に悪影響が出ることはありません。無理にワインダーを使わず、時計を休ませてあげるのも一つの選択肢です。
数ヶ月〜:コンディション維持を優先した「定期的点検」を
季節限定で使うモデルや、特定の行事でしか着用しない個体の場合、数ヶ月単位で保管することになります。
- 推奨アクション: 1ヶ月に一度を目安に箱から出し、手巻きで十分に巻き上げて一定時間動作させることで、状態確認を行うのも一つの方法です。
- ポイント: これは内部の潤滑油が特定の箇所に留まり、固着してしまうのを防ぐための「準備運動」のようなものです。あわせて、日付の早送り機能やリューズの操作感に違和感がないかを確認することで、故障の早期発見にもつながります。
1年以上〜長期:将来を見据えた「保管とオーバーホール」の計画
諸事情により1年以上の長期にわたって着用する予定がない場合は、単なる「保管」ではなく「維持管理」という意識が必要になります。
- 推奨アクション: 湿気対策を徹底した冷暗所での保管。また、動かしていなくてもパッキンなどの消耗品は劣化するため、5〜10年に一度の正規オーバーホールを検討してください。
- 公式サービスの視点: ロレックス公式のオーバーホールを受けると、内部の洗浄や注油だけでなく、防水検査も実施されます。長期保管から復帰させる際は、まず正規サービスセンターで点検を受けることが、愛機を一生モノにするための最も確実な道です。
まとめ
ロレックスを使わない時の扱いは、決して難しいことではありません。
大切なのは、「人間が過ごして心地よいと感じる環境(極端な湿気や磁気、直射日光のない場所)」に置いてあげること。そして、止まってしまった際には「正しい手順で丁寧に再始動させてあげること」です。
最新の32系キャリバーを搭載したモデルであれば、週末の休息を共にするパートナーとして、より自由に、より身軽に付き合うことができるでしょう。一方で、数十年と時を刻んできたヴィンテージモデルであれば、より細やかな湿度管理や手巻きの作法が、その価値と美しさを守る鍵となります。
「使わない時間」もまた、ロレックスという至高の時計を所有する楽しみの一部です。本記事でご紹介した保管方法や運用術が、皆様と愛機との末永い豊かな関係の一助となれば幸いです。
正しい知識を持って接することで、ロレックスは期待に応え、世代を超えて時を刻み続けてくれるはずです。
よくある質問(FAQ)
※以下は「ロレックス 使わない時」と検索する方から特に多い質問を、公式情報と実用面の両方から整理したものです。
【基本理解】ロレックスを使わない時の疑問
- ロレックスを使わないと止まるのは故障ですか?
-
故障ではありません。ロレックスを含む機械式時計は、ゼンマイのエネルギーを使い切ると自然に止まる構造です。最新の32系ムーブメントでは約70時間前後、従来世代では約48時間前後のパワーリザーブが設計上の目安とされています。
- ロレックスは止めたまま保管しても問題ありませんか?
-
一般的な使用状態であれば、数日〜数週間程度止めたまま保管しても問題ありません。ロレックス公式も「止まっている状態=異常」とはしておらず、再使用時に正しく巻き上げることが重要とされています。
【保管方法】置き場所・環境に関する疑問
- ロレックスを使わない時の最適な保管場所は?
-
「直射日光」「高温多湿」「強い磁気」を避けた場所が理想です。人が快適に感じる室内環境は、時計にとっても負担が少ないとされています。洗面所やスマートフォン・スピーカーの近くは避けましょう。
- 純正ボックスやサービス後のポーチで保管しても大丈夫?
-
はい。純正ボックスや公式サービス後に付属するソフトポーチは、日常的な保管には十分適しています。ただし、湿気がこもらないよう、定期的な状態確認を行うとより安心です。
【運用】止まった時・再始動に関する疑問
- 止まったロレックスはどうやって動かすのが正解?
-
リューズを解除し、時計回りに20〜40回ほど手動で巻き上げてから時刻・日付を調整し、最後にリューズを確実にねじ込みます。これはロレックス公式でも案内されている基本的な再始動手順です。
- 日付変更はいつやっても大丈夫?
-
モデルによっては、夜間(一般的に20時〜4時頃)の日付操作が機構に負担をかける場合があります。安全のため、針を6時付近に動かしてから調整するのが無難です。
【ワインダー】ワインディングマシーンに関する疑問
- ワインディングマシーンは使ったほうがいいですか?
-
必須ではありません。複数本所有していて頻繁に切り替える場合や、カレンダー調整の手間を省きたい場合には便利ですが、使わずに止めて保管しても問題ありません。
- ロレックスに適したTPD(回転数)の目安は?
-
一般的には650TPD前後・双方向回転が目安とされることが多いですが、これは公式数値ではありません。過剰な巻き上げを避けるため、タイマー機能付きの高品質なワインダーを選ぶことが重要です。
【長期保管】数ヶ月〜数年以上使わない場合
- 数ヶ月使わない場合、何かしたほうがいい?
-
1ヶ月に一度を目安に状態確認を行い、必要に応じて手巻きで巻き上げて動作を確認すると安心です。これは内部状態のチェックと早期トラブル発見につながります。
- 1年以上使わないロレックスはどう管理すべき?
-
湿度管理を徹底した環境で保管し、将来的な使用を見据えて正規サービスでの点検・オーバーホールを検討すると安心です。ロレックス公式では、使用頻度に関わらず定期的なメンテナンスを推奨しています。
出典・参考情報
参考文献・出典一覧(タップで開く)
ロレックス公式サイト|ムーブメントとパワーリザーブに関する技術解説
https://www.rolex.com/ja/watchmaking/features/movement
ロレックス公式サイト|時計の取り扱い・使用・保管に関する基本ガイド
https://www.rolex.com/ja/media/user-guides
ロレックス公式サービスセンター案内|オーバーホールとアフターサービスについて
https://www.rolex.com/ja/watch-care-and-service
ロレックス公式カタログ・製品仕様(Cal.3230 / 3235 ほか)
※各現行モデル製品ページ記載のスペック情報を参照
時計技師・業界向け技術情報
WOSTEP(スイス時計製造者訓練教育プログラム)
https://www.wostep.ch/
ウォッチワインダー主要メーカー公開資料
Barrington Watch Winders / Wolf1834 / Orbita
※TPD(Turns Per Day)目安値に関する一般的リファレンスとして参照
機械式時計の潤滑油とメンテナンスに関する一般的知見
A. Lange & Söhne / ETA Technical Documentation / Watchmaking textbooks
※「油が固まる」という表現の科学的整理に使用
注記
※本記事は上記公式・業界資料および一般的な時計技術知見をもとに構成していますが、個体差や使用環境により最適な管理方法は異なります。
※最終的な点検・修理・防水性能の確認については、ロレックス正規サービスセンターでの対応を推奨します。

