ロレックスという高価で精密な機械式時計の秒針が、突然ピタリと動かなくなったとき、オーナーが感じる焦りや不安は計り知れないものです。
「故障だろうか?」
「修理代はいくらかかるだろうか?」
「自分でどうにかできるのか?」
ご安心ください。ロレックスは高い堅牢性を持つ時計ですが、その繊細なムーブメントは、日常生活のちょっとした環境の変化や、動力切れによって停止することがあります。「ロレックスの秒針が動かない」トラブルの多くは、適切な手順で対処すれば、プロの修理を必要としないケースで解決します。
この記事は、あなたが今直面している秒針停止の原因を正確に特定し、時計に負担をかけずに問題を解決するための完全なロードマップを提供します。
秒針が動かない原因は、単なる動力不足から、現代社会特有の磁気帯び、そして深刻な機械的故障まで、大きく3つに分けられます。この記事を最後まで読み進めることで、あなたは愛機を危険な状態から守り、原因を特定し、もし修理が必要になったとしても、費用と選択肢を自信をもって判断できるようになるでしょう。
まずは、時計をより深刻な状態にしないために、緊急で知っておくべき注意点から確認していきましょう。
秒針が動かないことを確認したら、まず以下の3つの行為は絶対に避けてください。
行為 | 理由とリスク |
❌時計を強く振って動かそうとする | 内部のローター軸やテンプに過度な衝撃がかかり、部品が歪んだり外れたりする原因になります。特にローターが緩んでいる場合に振ると、他の部品を破損させることがあります。 |
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❌リューズを無理に回したり、力を入れて操作する | リューズが動かない原因が内部の錆や破損にある場合、無理に回すと巻き芯が折れたり、ネジ山が潰れたりする重大な故障につながります。 |
❌リューズを引き出したまま放置する | ねじ込み式リューズ(ロック機能)が解除された状態では、時計の防水性が損なわれています。湿気や水滴が内部に侵入しやすくなり、ムーブメントに致命的なダメージを与えます。 |
高価で精密なロレックスの秒針が止まると、つい焦ってしまいがちです。しかし、誤った行動はムーブメントにさらなる負荷をかけ、修理費用を不必要に高めてしまう可能性があります。
- 秒針停止時の正しい応急処置と巻き上げ回数
- 磁気帯びや油切れなど停止の根本原因
- 故障した場合の修理費用と買取の判断基準
- 日頃からできるトラブルを避けるための予防策
ロレックスの「秒針が動かない」時にまず試すべき応急処置

- 原因の9割:ゼンマイの正しい巻き上げ方と回数目安
- リューズや時刻設定の位置確認でミスを排除する
- 秒針は本当に動いていない?動作確認のポイント
「ロレックス 秒針が動かない」というトラブルに遭遇したとき、焦ってすぐに修理店に持ち込む必要はありません。多くのケースには、動力不足や操作ミスなど、ご自身で解決できる原因が潜んでいます。
ここでは、プロに依頼する前に、時計に負担をかけずに試すべき最も重要かつ正しい3つのチェック項目を解説します。
原因の9割:ゼンマイの正しい巻き上げ方と回数目安
ロレックスの自動巻き時計(パーペチュアル)が止まる最も一般的な原因は、シンプルにゼンマイの巻き上げ不足(動力切れ)です。
現行モデルのパワーリザーブは約70時間(約3日弱)ありますが、数日着用しなかったり、デスクワーク中心で腕の動きが少なかったりすると、ローターの回転が不十分になり、時計は動力を使い果たしてしまいます。
秒針が動かない場合は、以下の手順でリューズによる手巻きを試みてください。これが「ロレックスの秒針の動かし方」の基本です。
☘️【基本】ロレックスの秒針の動かし方
- リューズロックの解除
- ねじ込み式リューズの場合、反時計回り(手前側)にゆっくり回してロックを解除し、リューズを少し引き出します。
- ゼンマイの巻き上げ
- リューズがロックを解除した位置にあるのを確認し、時計回り(文字盤の12時方向)にゆっくりと回します。
- 巻き上げ回数の目安
- 30回から40回を目安に回してください。この回数で、止まっていたムーブメントは確実に始動します。
- リューズの再ロック
- 巻き上げ後、リューズを押し込みながら時計回り(奥側)にねじ込み、完全にロックします。
もし「ロレックスのゼンマイを巻いても動かない」と感じる場合、それはゼンマイが切れているか、内部の歯車に深刻な問題が発生している可能性を示唆します。その場合は、無理な操作をすぐにやめ、次の原因究明に進む必要があります。
リューズや時刻設定の位置確認でミスを排除する
秒針が動かない原因が、リューズの不完全な操作によるものである可能性も考えられます。リューズの操作には、時計の機能ごとに異なるポジションがあり、これが「ロレックスの秒針の合わせ方」にも関わってきます。
- ハック機能(秒針停止機能)の確認
- ロレックスの多くのモデルは、リューズを時刻合わせの位置(一般的に最も引き出した位置)まで引くと、秒針が停止する(ハック機能)仕組みになっています。時刻合わせを終えた後、リューズを完全に押し込んでロックし忘れると、秒針が動かないままになってしまいます。必ずリューズを押し込み、ねじ込んでロックしてください。
- リューズの不完全なねじ込み
- リューズが最後までねじ込まれていないと、防水性が保てないだけでなく、モデルによっては巻き上げ機構が作動せず、着用していても自動巻きができていない場合があります。リューズのねじ込みは、指先に力が伝わらなくなるまでしっかりと行ってください。
秒針は本当に動いていない?動作確認のポイント
クォーツ時計は秒針が「カチッ、カチッ」と1秒ごとにステップしますが、機械式時計であるロレックスの秒針は、非常に滑らかに動きます(スイープ運針)。
- ロレックスの秒針の動き方の特性
- ロレックスの秒針は、一見すると止まっているように見えるほど、非常に繊細な動きをしています。
- 確認方法
- 時計を耳に近づけ、規則的な「チクタク」という作動音が聞こえるか確認してください。音が聞こえていれば、ムーブメントは動いています。また、30秒ほど秒針の動きをじっと観察し、極わずかでも動いているかを確認してください。
もし音もせず、微動だにしない場合は、次のセクションで解説するより深刻な原因を疑う必要があります。
秒針が動かない「根本原因」を徹底究明する

- 現代の脅威:ムーブメントを狂わせる「磁気帯び」
- 動かないのはなぜ?潤滑油の劣化と機械的故障
- 「リューズが動かない」原因と無理に操作するリスク
応急処置を試みても「ロレックスの秒針が動かない」状態が続く場合、ムーブメント内部または外部環境に、自己解決が難しい根本的な問題が発生しています。
ここでは、動力不足以外の最も多い原因と、そのメカニズムについて、専門的な視点から解説します。
現代の脅威:ムーブメントを狂わせる「磁気帯び」
スマートフォンやノートPC、カバンや冷蔵庫のマグネットなど、私たちの日常生活は強力な磁気発生源に溢れています。ロレックスは高い耐磁性を誇りますが、強力な磁気に長期間さらされると「磁気帯び(帯磁)」を起こし、その影響で秒針の動作に異常をきたすことがあります。
【磁気帯びが秒針に与える影響】
❌完全な停止(秒針が動かない) |
最も強い磁気を帯びた場合、ムーブメントの心臓部であるヒゲゼンマイのコイルが磁力でくっつき合い、解けなくなることがあります。ヒゲゼンマイはテンプ(調速機)の往復運動を制御する重要な部品であり、これが機能不全に陥ると、秒針は完全に停止します。 |
❌極端な時間のズレ |
完全に停止しなくても、ヒゲゼンマイが絡むことで、振動数が異常に上がり、時間が大幅に進む(例:1日に数時間)という症状が主ですが、進んだり遅れたりが不規則に発生し、結果的に正しい時刻を刻めなくなることがあります。 |
【自宅でできる磁気帯びチェック方法】
方位磁石(コンパス)を時計のリューズやケースにゆっくり近づけてみてください。もし方位磁石の針が強く引き寄せられたり、振れたりするようであれば、時計が磁気を帯びている可能性が高いです。この場合は、プロによる磁気抜き(脱磁)が必要です。
動かないのはなぜ?潤滑油の劣化と機械的故障
ロレックスが「ゼンマイを巻いても動かない」状態に陥っている場合、それは時計の「寿命」に関わる深刻な内部故障である可能性が高いです。
❌潤滑油の劣化と油切れ |
機械式時計の何百もの部品がスムーズに動くためには、潤滑油が不可欠です。この潤滑油は、空気中の湿気や酸化により、通常5〜10年で劣化し、粘度が上がったり乾いたりします。油が切れると、歯車同士の摩擦が急激に増大し、トルク(力)が伝わらなくなり、結果として秒針が停止します。これは、定期的なオーバーホール(分解掃除)を怠った場合に起こる、最も一般的な停止原因の一つです。 |
❌ゼンマイ切れ |
ゼンマイ自体が金属疲労によって破断すると、リューズを巻いても動力が香箱に伝わらなくなります。リューズを回した時に手応えが全くない、または非常に軽いと感じる場合は、ゼンマイ切れの可能性が高いです。 |
これらの内部故障は、部品の摩耗や破損を伴うため、ご自身での対処は不可能であり、すぐに専門業者へ修理を依頼する必要があります。
「リューズが動かない」原因と無理に操作するリスク
リューズがスムーズに動かない、または操作不能になっている場合も、秒針が動かない原因となります。「ロレックスのリューズが動かなくなった原因は?」と疑問に思う方もいるでしょう。
主な原因は、リューズの根元にある巻き芯の折れや、長年の汗や汚れによる錆、固着です。特にねじ込み式リューズのネジ山の摩耗や破損は、リューズが奥までねじ込めなくなるだけでなく、巻き芯自体が動かなくなる原因ともなります。
リューズは時計の操作系であり、無理な操作を続けると修理がさらに複雑になり、高額な巻き芯交換やリューズ交換が必要になります。リューズに異常を感じたら、決して無理に動かさず、専門業者に点検を依頼してください。
ロレックスが動かない場合の「修理費用」と「予防策」

「ロレックスの秒針が動かない」というトラブルの原因を特定した後、次に考えるべきは「修理代」と、今後二度とトラブルを起こさないための「予防策」です。高額な修理費用を覚悟する前に、最新の相場と最良の選択肢を知っておきましょう。
プロに任せるべき故障と修理費用の最新目安
磁気帯び、油切れ、ゼンマイ切れなど、自己解決が難しいトラブルは、ムーブメントを完全に分解・洗浄・注油・調整するオーバーホール(OH)が必要になります。
「ロレックス 動かない 修理代」の目安として、2025年9月現在の正規サービスと民間修理業者の費用相場を比較します。
サービス | モデル(デイトジャストなど) | OH基本技術料(目安) | ゼンマイ等部品交換の追加費用 |
正規サービス | オイスターパーペチュアル系 | 60,500円~ | 別途加算(高額になる傾向) |
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デイトジャスト・エクスプローラー系 | 77,000円~ | 別途加算(高額になる傾向) | |
優良な民間修理店 | 一般的なモデル | 38,500円~ | 部品代が別途加算(正規より安価な場合あり) |
売却を検討するなら?「ロレックス 動かない 買取」の注意点
「ロレックス 動かない 買取」を検討する方もいるでしょう。故障しているからといって、ロレックスの価値が大幅に下がるわけではありません。
⭕動かなくても価値は高い |
ロレックスはブランド力と素材の価値が高いため、動かないジャンク品でも高値で取引されます。特に人気モデルであれば、修理費用を差し引いても十分な価格がつくケースが多いです。 |
📌修理は不要か? |
一般的に、査定額から修理費用を差し引いて計算されるため、ご自身で先に修理を行う必要はありません。まずは故障した状態のまま複数の買取店で見積もりを取るのが、最も賢明な方法です。 |
秒針の停止を防ぐ!今日からできるロレックスの愛用習慣
「ロレックス 秒針が動かない」というトラブルを経験しないために、日々の愛用習慣を見直すことが最も重要です。
🌱動力維持の習慣 |
数日着用しない場合は、完全に停止する前にリューズで20回程度巻き上げて動力を補給する習慣をつけましょう。これにより、油切れの状態での再始動を防げます。 |
🧭磁気帯びの対策 |
スマートフォン、タブレット、PCのスピーカー、IHクッキングヒーターなどの磁気発生源から時計を最低でも5cm以上離すことを徹底してください。特にスマートフォンをバッグに入れる際は、時計と反対側のポケットに入れるなど、具体的な対策を講じましょう。 |
🛠️定期的なオーバーホール |
ロレックスが推奨する5〜10年ごとの定期的なオーバーホールは、ムーブメントの潤滑油を交換し、摩耗した部品を予防的に交換するための、時計を長持ちさせるための必須の投資です。 |
よくある質問(FAQ)
- ロレックスの秒針が動かないとき、まず何を試すべきですか?
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最初に、ゼンマイの巻き上げ不足を疑ってください。リューズをロック解除し、時計回り(文字盤の12時方向)に30〜40回ゆっくり巻いてみましょう。これで動けば、動力切れが原因です。
- 巻き上げても動かない場合、修理が必要ですか?
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自己対処で動かない場合は、修理が必要です。主な原因は、潤滑油の劣化による油切れ、内部部品の破損、またはゼンマイ切れです。無理にリューズを操作せず、すぐに専門業者に相談しましょう。
- ロレックスが磁気を帯びると、秒針は完全に止まりますか?
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はい、完全に止まることがあります。強い磁気を帯びると、ムーブメントの心臓部であるヒゲゼンマイが磁力でくっつき合い、時計の動作が停止します。時間の進みや遅れだけでなく、秒針停止も磁気帯びの症状の一つです。
- 秒針が動かない状態での修理費用はいくらくらいかかりますか?
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原因の多くはオーバーホール(OH)が必要です。現行モデルの場合、正規店での基本技術料は7万円台から、民間修理店ではその3〜5割程度が目安です。これにゼンマイなどの部品交換代が別途加算されます。
- 秒針の停止を防ぐために、日常で何を心がけるべきですか?
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最も重要なのは、動力維持と磁気対策です。数日着用しない場合はリューズで動力を補給し、スマートフォンやPCのスピーカーなど、磁気発生源から時計を5cm以上離す習慣をつけましょう。
「ロレックスの秒針が動かない」時に確認すべき最終的な総括
- 秒針が停止しても時計を強く振って動かそうとしてはならない
- リューズが重い場合は無理に操作すると巻き芯折れのリスクがある
- 秒針停止の最も多い原因はゼンマイの巻き上げ不足である
- 止まったロレックスはリューズで30〜40回巻き上げて始動させる
- リューズがハック位置にあると秒針が停止したままになる
- 秒針の動きが非常に滑らかなため停止していると誤認しないこと
- 磁気帯びが強い場合、ヒゲゼンマイが絡んで秒針が完全に止まる
- 磁気帯びは方位磁石で簡単にセルフチェックが可能である
- 巻き上げても動かない場合は油切れやゼンマイ切れを疑うべきである
- 潤滑油の劣化を防ぐには5〜10年ごとの定期的なOHが必要である
- リューズの動作不良は巻き芯の折れや錆が原因となることが多い
- 内部故障の場合、正規サービスでのOH基本料は7万円台からが目安である
- 故障したロレックスでも高い資産価値があり買取も可能である
- 秒針停止の予防策として磁気発生源から5cm以上離すことが重要である
- 週末に巻き上げを行うなど動力を切らさない習慣を身につけるべきである
「ロレックスの秒針が動かない」というトラブルは、決して珍しいことではありません。それは、あなたが所有しているのが、精巧な部品の集合体である機械式時計である証拠でもあります。
この記事で解説したように、原因は多くの場合、巻き上げ不足、磁気帯び、そして長期使用による油切れのいずれかです。原因を正しく切り分け、絶対にやってはいけない行為を避け、適切に対処すれば、ロレックスは再び正確な時を刻み始めます。
大切なのは、トラブルを恐れることではなく、ロレックスという精密機械に対する正しい知識と適切な習慣を持つことです。日々の小さな配慮が、あなたの愛機を世代を超えて受け継がれる、真の「一生モノ」へと育てていくでしょう。
https://www.rolex.com/ja/watches
ロレックス公式サイト磁気帯びの症状の見分け方や、ご自宅でできる簡単な予防・対処法をより深く知りたい方は、他ブランドの事例ですが、時計が磁気から受ける影響の原理と対策が詳細に解説されている下記の記事もぜひご参照ください。

自己解決できない場合はここをチェック
もし、リューズでの巻き上げや磁気帯びチェックでも動かない場合、ゼンマイの巻きすぎなど、別の故障原因を疑う必要があります。
巻きすぎが原因ではないか不安な方は、ゼンマイの仕組みについて詳しく解説したこちらの記事もご確認ください。
