高級時計の世界において、複雑機構(コンプリケーション)の王と称されるものが「トゥールビヨン」です。そして、この機構を発明したのが、アブラアン・ルイ・ブレゲという時計史に名を刻む天才であることは広く知られています。
そのブレゲの偉大な遺産を、現代の腕時計という形で具現化し、世界にその存在を認めさせた金字塔こそが、今回掘り下げる「ブレゲ 3357 クラシック トゥールビヨン」です。このモデルは単なる高級時計という枠を超え、懐中時計の時代から腕時計の時代へと移行する、歴史的な過渡期を象徴する存在となっています。
現在、この「3357」は生産を終了していますが、その古典的な美しさと、トゥールビヨンを極めて純粋な形で表現したCal. 581Tムーブメントは、多くの時計愛好家にとって永遠の憧れであり続けています。
本記事では、このブレゲ 3357が持つ技術的な真実、初代「3350」からの進化の軌跡、そして、2025年9月現在の市場において、この歴史的な傑作を探し求める方が知っておくべきすべての情報と、専門的な知識を徹底的に解説します。この記事を通して、あなたが本物のクラシックを見極める確かな審美眼を得ることを願っています。
- 腕時計トゥールビヨンの歴史的始点と位置づけ
- 古典的な手巻きムーブメントCal. 581Tの詳細な特徴
- 現行モデルとは異なる3357特有のデザインと美学
- 生産終了後の市場における購入方法と注意点
ブレゲ 3357:トゥールビヨンを「腕時計」へと昇華させた偉大なクラシック

- トゥールビヨン発祥のブランドが作った「量産型」の金字塔
- 3357の芸術的魅力:古典意匠の極みと手作業のディテール
アブラアン・ルイ・ブレゲが生み出した「トゥールビヨン」が、本来、懐中時計のための機構であったことは周知の事実です。重力の影響による精度誤差を相殺するために考案されたこの複雑機構は、小型化が極めて困難であり、長らく腕時計への搭載は夢物語でした。
しかし、ブレゲというメゾンは、その発明者の名を冠するブランドとしての使命を果たすべく、1990年代初頭に世界初のトゥールビヨン搭載量産型腕時計「ブレゲ 3350」を発表し、時計界に衝撃を与えます。その金字塔的なモデルを改良し、完成度を極めた後継機こそが、今回深く掘り下げる「ブレゲ 3357 クラシック トゥールビヨン」です。
トゥールビヨン発祥のブランドが作った「量産型」の金字塔
ブレゲ 3357が持つ最大の歴史的意義は、トゥールビヨンを「極めて高い技術を要する、量産可能な腕時計の複雑機構」として確立した点にあります。このモデルの登場以降、トゥールビヨンは一部のビスポーク(特注)品から、高級時計ブランドが競い合う主戦場へと一気に引き上げられました。
初代「3350」からの進化と完成度
ブレゲ 3357は、その基本設計や搭載ムーブメントCal. 581Tを3350から継承しつつも、細部の仕上げや意匠を洗練させたモデルです。
最も顕著な変更点の一つが、ケースバックの仕様です。初代3350の一部モデルではソリッドバック(金属製の裏蓋)が採用されていましたが、3357ではほとんどのモデルでサファイア・ケースバックが標準装備されました。これは、内部で躍動する手巻きムーブメントとトゥールビヨンの動きを、オーナーが直接鑑賞できることを重視した、現代的な配慮と言えます。また、ケースサイドのフルーティング(コインエッジ)やリューズの形状にも微細な調整が加えられ、クラシックコレクションとしての完成度が極限まで高められました。
ブレゲ 3357の基本スペック
最終的な仕様における3357のスペックは、現代の時計とは一線を画す古典的な魅力に溢れています。
項目 | スペック(最終モデル例) | 特徴と意義 |
ケース径 | 35 mm | 現代のトレンドに比べ小ぶりで、古典的な紳士の装いを体現。 |
---|---|---|
ケース厚 | 約9.15 mm | 複雑なトゥールビヨンを搭載しながら、極めて薄型を実現。 |
防水性 | 30m | 日常生活防水レベル。クラシックウォッチの基本仕様。 |
ムーブメント | 手巻き Cal. 581T | トゥールビヨンの動きを最大限に鑑賞できる手巻き式。 |
振動数 | 18,000振動/時(2.5Hz) | 古典的な低振動で、トゥールビヨンの緩やかな動きが際立つ。 |
パワーリザーブ | 約50時間 | 手巻き時計として実用的な持続時間を確保。 |
ケース素材 | YG(BA)、WG(BB)、RG(BR) | 主にイエローゴールド、ホワイトゴールド、ローズゴールドを展開。 |
特に注目すべきは、ケース径35mmというサイズ感です。これは、控えめでありながらも、トゥールビヨンという機構の圧倒的な存在感を際立たせる、ブレゲの卓越したバランス感覚を示すものです。そして、この小さな空間に、後に続くブレゲ トゥールビヨンの基礎となる名機 Cal. 581T が搭載されているのです。
3357の芸術的魅力:古典意匠の極みと手作業のディテール
ブレゲの時計は、単なる精密機械ではなく、「芸術品」として評価されます。その哲学は、ブレゲ 3357 クラシック トゥールビヨンの隅々にまで貫かれており、メゾンが定める厳格なデザインコードが古典的な美しさを創り上げています。
ブレゲの五大要素が織りなすクラシシズム
3357の文字盤とケースには、ブレゲが200年以上の歴史の中で確立した、アイコニックな意匠が惜しみなく投入されています。
①ブレゲ針 |
剣先を「円」で象った、中空のブルースティール針。その優雅な形状は、時間を指し示すという機能を超えた、美の象徴です。 |
②ギヨシェ彫り(手彫り) |
文字盤の表面を飾る緻密な装飾です。3357の文字盤中央には、「パリの釘打ち(クル・ド・パリ)」と呼ばれる繊細なパターンが手作業で施されています。機械では再現できない、独特な温かみのある光の反射を生み出し、古典的な優雅さを強調しています。 |
③コインエッジ(フルーティング) |
ケース側面に施された、細かく垂直な溝の装飾。古代の柱を思わせるこの意匠は、ブレゲの時計が持つ建築的な美しさを表現しています。 |
④ローマンインデックス |
エナメルや塗装ではなく、文字盤のチャプターリング(目盛り部分)に直接彫り込まれたローマン数字のインデックス。その書体はクラシックコレクションのために洗練されたものです。 |
⑤オフセット(偏心)配置 |
3357のデザインにおける最大のハイライトは、時分針が中心からずれ、1時〜2時位置のチャプターリングに偏心して配置されている点です。これにより、6時位置に鎮座するトゥールビヨン機構が主役として引き立ち、文字盤全体に劇的な立体感と非対称の美をもたらしています。 |
ダニエル・ロート時代の洗練された遺産
ブレゲ 3357が誕生した背景には、1980年代後半にブランドを買収し、その復興と再評価に尽力した人物の存在があります。彼が確立した、アブラアン・ルイ・ブレゲのオリジナルデザインを尊重しつつ、現代の審美眼に耐えうるよう洗練させるという哲学が、3357に凝縮されています。このモデルは、単なる過去の復刻ではなく、偉大な歴史を現代に継承するための「デザインコードの確立」という役割を果たした、メゾンにとって極めて重要な遺産なのです。
この古典的な美意識と、現代の量産技術の接点に立つブレゲ 3357は、時を超えても色褪せない、永遠のクラシック トゥールビヨンとして、その価値を保ち続けています。
Cal. 581Tの真髄:ブレゲが守り抜いた「古典的なトゥールビヨン」

- 手巻きムーブメントCal. 581Tの特性と設計思想
- ムーブメントに施された職人技:手彫り彫金(エングレービング)の芸術
- 現行モデルとの比較:「ブレゲ トゥールビヨン」の進化と3357の個性
ブレゲ 3357が、時計愛好家から特別視される最大の理由は、そのムーブメントCal. 581Tにあります。このキャリバーは、ただトゥールビヨンを搭載しているだけでなく、アブラアン・ルイ・ブレゲの時代の技術的な思想、すなわち「古典的な美学」を極めて忠実に再現し続けている点に、真の価値があるのです。
手巻きムーブメントCal. 581Tの特性と設計思想
Cal. 581Tは、後のブレゲが開発する薄型で高振動な自動巻きトゥールビヨンムーブメントとは一線を画す、古典的でロマンに溢れた特性を持っています。
トゥールビヨンの鑑賞に最適な「手巻き」の選択
3357が自動巻きではなく、あえて「手巻き」を採用しているのには明確な理由があります。それは、トゥールビヨンの動きを最大限に鑑賞できる機会を確保するためです。
自動巻きムーブメントでは、ローター(自動巻き錘)がムーブメントの一部を覆い隠してしまいますが、手巻き式ではその遮蔽物が一切存在しません。シースルーバックから覗き込むオーナーは、ムーブメントの地板に施された精緻な彫金から、テンプが載ったキャリッジ(かご)が悠然と回転する様子まで、すべてをクリアに楽しむことができます。これは、クラシック トゥールビヨンの美学を追求するブレゲのこだわりと言えるでしょう。
古典的な低振動が生むロマン
Cal. 581Tの振動数は毎時18,000振動(2.5Hz)です。これは現代の時計に見られる28,800振動(4Hz)といった高振動ムーブメントと比較して非常にゆっくりとしたテンポで動きます。
この低振動には二つの意義があります。一つは、ブレゲが活躍した時代に近い古典的なムーブメントの設計思想を継承していること。もう一つは、トゥールビヨンのキャリッジが回転する様子がより視覚的にゆったりとして見えることです。トゥールビヨンという機構が持つ「時間と重力に抗うロマン」を、オーナーはより深く感じ取ることができるのです。
ムーブメントに施された職人技:手彫り彫金(エングレービング)の芸術
3357が単なる機械以上の価値を持つのは、その内部、特にムーブメントの地板(ベースプレート)に施された高度な装飾技術によるものです。
シースルーバックから見える「花模様」の彫金
ブレゲ 3357のサファイア・ケースバック越しに見えるムーブメントの地板には、職人による繊細な手彫り彫金(エングレービング)が全体に施されています。この豪華な花模様の装飾は、ブレゲの時計に共通する特徴であり、時計製造が芸術と完全に一体化していた時代へのオマージュです。
トゥールビヨン機構を支えるブリッジやプレートにも細部にわたる面取りや研磨が施されており、その仕上げはまさにため息が出るほど。この精緻な彫金は、時計が静止している時でさえ、所有者に最高の満足感を与えてくれます。
トゥールビヨンケージの構造と改良
6時位置に見えるトゥールビヨンケージは、わずか1分間で一回転し、スモールセコンド(秒表示)の役割も兼ねています。
このトゥールビヨンは、ブレゲが開発した独自のブレゲひげぜんまいを搭載しており、精度と耐久性の向上に貢献しています。また、3357の比較的後期のモデルや最終型においては、初期のモデルに見られた緩急針(テンプの振動周期を調整する部品)を廃止し、より安定した精度を実現するフリースプラング(調整なし)仕様へと改良が加えられました。これにより、所有者はより高い信頼性をもってこの古典的な傑作を愛用できるようになりました。
現行モデルとの比較:「ブレゲ トゥールビヨン」の進化と3357の個性
ブレゲ 3357は生産終了していますが、その価値を理解するためには、現在ブレゲが展開するトゥールビヨンムーブメントと比較することが不可欠です。
現代のトゥールビヨンが追求する価値
2025年9月現在、ブレゲの「クラシック コンプリケーション」ラインには、主に以下のようなトゥールビヨンモデルがラインナップされています(例:5377、5367、5395など)。
現行トゥールビヨン(例:5377) | クラシック 3357 | 追求する価値 |
自動巻き | 手巻き | 巻き上げの手間と鑑賞美の選択。 |
---|---|---|
エクストラフラット(超薄型) | 薄型(9.15mm) | 極限の薄さ vs. 古典的なバランス。 |
高振動(例:4Hz) | 低振動(2.5Hz) | 精度と安定性 vs. ロマンと古典美。 |
現行モデルが「エクストラフラット(超薄型)」や「高振動化」といった、極限の技術と実用性を追求しているのに対し、3357はあえてそのトレンドを追わず、「古典的なトゥールビヨンの美学」を追求し続けた稀有な存在なのです。
「トラディション」ラインとの対比
また、ブレゲは「ブレゲ トラディション レトログラード」などの、ムーブメント構造を文字盤側から完全に露出させた「トラディション」コレクションも展開しています。これらのモデルが「技術構造の視覚化」を主眼としているのに対し、3357は、クラシックな文字盤意匠とトゥールビヨン機構の融合という、異なるアプローチで美しさを表現しています。
このように、ブレゲ 3357は、メゾンの長い歴史の中で、トゥールビヨンの「古典的な完成形」として独自の地位を確立しており、その手巻きの設計思想と控えめなサイズ感は、現代の複雑機構では得難い、静謐で高貴な魅力を放ち続けています。
ブレゲ 3357の購入戦略:クラシックを求める人のための市場ガイド

- 3357を探すためのリファレンスと素材の知識
- 中古市場の動向と信頼できる購入先を見極めるポイント
- 3357を長く愛用するためのメンテナンスと注意点
- よくある質問(FAQ)
- ブレゲ 3357が体現するトゥールビヨンの古典美と総括
「ブレゲ 3357」は、現在、ブレゲの公式サイトで新品として購入できる現行モデルではありません。そのため、この傑作を手に入れるには、中古市場や信頼できる販売経路を探ることが必須となります。このセクションでは、生産終了モデルである3357を巡る市場の状況と、購入前に知っておくべき重要な戦略を解説します。(ブレゲ クラシック コンプ リケーション)
3357を探すためのリファレンスと素材の知識
ブレゲ 3357を探す際に、まず理解しておくべきは、素材や仕様によって異なるリファレンス(型番)の体系です。型番は時計の素性を知るための重要な手がかりとなります。
主な素材とリファレンス
3357の主要なモデルは、ケース素材によって識別されます。型番の末尾には、特定の仕様を示す番号が続きます。
型番(素材コード) | 素材 | 特徴 |
3357BA | イエローゴールド(YG) | トゥールビヨンが発明された時代を思わせる、最も古典的で温かみのある素材。 |
---|---|---|
3357BB | ホワイトゴールド(WG) | プラチナのような洗練された輝きを持ちながら、控えめで現代的な印象。 |
3357BR | ローズゴールド(RG) | 肌馴染みが良く、上品で落ち着いたエレガンスを演出。 |
これらの基本コードに加え、文字盤やストラップの仕様によって、型番末尾の数字(例:/12/986)が異なります。購入検討の際は、単に「3357」だけでなく、正確な型番と素材を照合することが不可欠です。
希少性の高い限定モデル
非常に稀ではありますが、プラチナ(PT)ケースを採用したモデルや、ダイヤモンドをセッティングした宝飾モデル(3358など)も存在しました。これらは流通量が極めて少なく、市場に出た際の価格は高額になる傾向があります。古典的なトゥールビヨンを極めたいのであれば、これらの希少なリファレンスにも注目する価値があります。
中古市場の動向と信頼できる購入先を見極めるポイント
生産終了モデルの購入においては、「いつ、どこで、誰から買うか」が、その後の満足度を大きく左右します。2025年10月現在、ブレゲ 3357は流通量が限られているため、綿密な調査が必要です。
市場の評価と価格動向の概観
3357は、ブレゲのトゥールビヨンの歴史において非常に重要な位置を占めるため、その価値は安定しており、容易に下落しにくい傾向があります。特に状態の良い個体、または正規サービスでオーバーホール(OH)直後の個体は、高い評価を受けています。
ただし、価格は素材の希少性、コンディション、為替レートなどによって常に変動します。 そのため、具体的な価格を記事で断定することはできませんが、購入検討者は複数の優良な専門店の価格を継続的にチェックし、市場の平均的な評価額を把握することが重要です。
信頼できる購入先の選び方
高額なコンプリケーションウォッチである3357を購入する際は、信頼できる専門チャネルを選ぶことが必須です。
専門性の高い通販サイトの利用 |
「ジャックロード」など、長い実績と信頼性を持つ高級時計専門の通販サイトを利用するメリットは大きいです。これらの店舗は、真贋鑑定や整備体制が確立されており、多くの場合、独自の保証が付帯します。 |
優良な並行輸入店・中古専門店 |
実際に現物を手に取って確認できる実店舗を持つ専門店は、コンディションを直接確認したい購入者にとって最適です。 |
避けるべきリスク |
個人売買やフリマサイトなどは、価格が安い場合もありますが、真贋やムーブメント内部の状態、保証の有無に大きなリスクを伴うため、極めて専門知識のある方以外には推奨できません。 |
3357を長く愛用するためのメンテナンスと注意点
ブレゲ 3357は、繊細なトゥールビヨン機構を搭載した芸術品です。長く最高の状態で愛用するためには、適切なメンテナンスと取り扱いが不可欠です。
古典的なCal. 581Tの維持管理 |
---|
定期的なオーバーホールの実施 |
Cal. 581Tのような古典的な手巻きムーブメントは、4~5年に一度を目安に、分解清掃と注油を行うオーバーホール(OH)が必須です。特にトゥールビヨンは摩擦が大きいため、通常よりも細心の注意を払った整備が求められます。 |
正規サービス利用の推奨 |
ブレゲは、その複雑機構を最高の状態に保つための専門的な工具と熟練の職人を擁しています。部品の供給や技術の正確性を考慮すると、多少費用がかさんでも、ブレゲの正規カスタマーサービスでのメンテナンスを強く推奨します。 |
取り扱い上の注意点
- 防水性の限界を理解する: 3357は30m防水(3気圧防水)であり、これは「日常生活防水」レベルを意味します。リューズは非ねじ込み式であるため、水に触れる機会(水泳、シャワーなど)での着用は絶対に避けるべきです。
- 衝撃・磁気の回避: トゥールビヨンは衝撃に弱い機構です。激しい運動時の着用は避け、強い磁気を発する機器(スピーカー、スマートフォンなど)の近くに置かないよう細心の注意が必要です。
ブレゲ 3357は、所有者に時計の歴史と技術、そして美学を語りかけてくれる、特別な存在です。適切な知識と愛情を持って接すれば、それは世代を超えて受け継がれる「偉大なクラシック」となるでしょう。
よくある質問(FAQ)

- ブレゲ 3357は現在も新品で購入できますか?
-
いいえ、3357は生産終了モデルです。現在は、中古市場や、信頼できる専門の並行輸入店・中古販売店を通じて探すことになります。
- 3357と先行モデルの3350の主な違いは何ですか?
-
基本的な設計は共通ですが、3357はケースバックがサファイアガラスになり、ムーブメントの彫金装飾のパターンや、リューズなどの意匠に微細な改良が加えられ、完成度が高められています。
- 3357のムーブメント Cal. 581Tの最大の特徴は何ですか?
-
最大の特徴は「手巻き」である点と、古典的な「18,000振動/時(2.5Hz)」である点です。これにより、トゥールビヨンの動きを遮ることなく、ゆったりとした回転を鑑賞できます。
- 3357の維持費(オーバーホール)は高額ですか?
-
トゥールビヨンという複雑機構のため、一般的な機械式時計よりも高額になります。特に正規サービスでのオーバーホールは、技術料が高く設定されていますが、機構の正確性を保つために定期的なメンテナンスは必須です。
- ケース径35mmは、現代の時計として小さすぎませんか?
-
現代のトレンドでは小ぶりですが、35mmはクラシックウォッチの伝統的なサイズであり、袖口にスマートに収まる上品さがあります。トゥールビヨンの存在感を損なわない、ブレゲ独自のバランス感覚が光ります。
ブレゲ 3357が体現するトゥールビヨンの古典美と総括
- 所有者にアブラアン・ルイ・ブレゲの哲学と歴史的なロマンを与える
- ブレゲ 3357は腕時計トゥールビヨンの量産化に成功した歴史的な金字塔である
- 初代モデル3350の完成されたデザインと機構を継承しつつ洗練させた後継機である
- 古典的な35mmケース径と薄型設計が持つ上品なクラシシズムが魅力である
- ムーブメントには手巻きのCal. 581Tを搭載し、鑑賞美を最優先している
- 低振動(18,000振動/時)設計により、トゥールビヨンの動きが優雅に見える
- シースルーバックから地板全体に施された精緻な手彫り彫金が鑑賞できる
- ブレゲ針、ギヨシェ彫り、コインエッジといった伝統意匠を完璧に備える
- 時分針がオフセット配置されており、トゥールビヨン機構が主役として際立つ
- トゥールビヨンケージがスモールセコンド(秒表示)の役割を兼ねている
- 後期モデルではテンプの調整機構がフリースプラング仕様に改良されている
- 現行の超薄型自動巻きモデルとは対照的に、古典的な美学を追求した一本である
- 生産終了モデルであり、現在は中古市場が主な入手経路となる
- イエロー、ホワイト、ローズの各ゴールド素材で展開されていた
- 高額な複雑機構のため、ブレゲ正規サービスでの定期的なオーバーホールが不可欠である
ブレゲ 3357は、単なるトゥールビヨンウォッチという言葉では括れない、ブレゲというメゾンの哲学と時計史における技術革新のすべてを体現したマスターピースです。
このモデルは、懐中時計の時代から受け継がれた古典的な美意識を、直径35mmという腕時計のケースに見事に凝縮し、手巻きムーブメントCal. 581Tと、熟練の職人によるギヨシェ彫りや彫金装飾によって、最高の芸術作品として昇華させました。現行の超薄型モデルとは対照的に、古典的なサイズ、振動数、そしてトゥールビヨンの構造は、静謐で高貴なロマンに満ちています。
ブレゲ 3357は生産を終え、その価値はさらに高まりを見せています。本記事で解説した歴史的背景と技術的な真実、そして中古市場での購入戦略は、あなたがこの偉大な時計を見極め、次のオーナーとして迎え入れるための確かな羅針盤となるはずです。
トゥールビヨンの起源に立ち返り、ブレゲの真髄を堪能できるブレゲ 3357。それは、あなたの時計コレクションにおいて、永遠に輝き続ける「グランド コンプリケーション」となるでしょう。
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