ブレゲのクラシックコレクションには、現行モデルとは少し趣の異なる時計が存在します。
その一つが「ブレゲ 5907」です。
約34~35mmの小径ケースに、ギヨシェ文字盤やブレゲ針など、ブランドを象徴する意匠を凝縮した手巻きモデル。2000年代に展開され、現在は生産終了となっているため、中古市場で見かける機会が中心となっています。
一方で、5907は単に「小さなブレゲ」というだけではありません。搭載ムーブメントにはCal.510DRとCal.511DRの世代差があり、とくにCal.511DRのパワーリザーブについては、資料によって異なる表記が見られます。
では、5907はどのような時計なのか。5157との違いやムーブメントの特徴、中古で選ぶ際に確認したいポイントまで、順を追って見ていきましょう。
- ブレゲ5907の特徴と基本的な仕様
- 510DRと511DRの世代差と違い
- 中古で5907を選ぶ際の確認ポイント
ブレゲ 5907とはどんな時計?

ブレゲ 5907は、クラシックコレクションに属する生産終了モデルです。2000年代に展開され、現在は中古市場で見かける機会が中心となっています。まずはモデルとしての基本的な位置づけと仕様を整理します。
5907は2001年頃から展開されたクラシックの手巻きモデル
ブレゲ 5907は、古典的な意匠を備えたクラシックコレクションの手巻きモデルです。5907については、2000年代に展開されたモデルとして紹介される一方、2007年のAntiquorum資料では1990年代製の個体も確認されています。現在の資料だけから、5907全体の生産開始年を一つの時点に限定するのは難しいため、本記事では2000年代にも展開された生産終了モデルとして扱います。
代表的な5907BA/12/984について、ブレゲ公式の旧製品ページでは、18Kイエローゴールドの34mmケースに手巻きのCal.511DRを搭載し、スモールセコンドとパワーリザーブ表示を備える仕様が確認できます。ケース厚は7.6mm、シースルーバック、防水性能は3気圧です。
一方、5907には、イエローゴールド(BA)、ホワイトゴールド(BB)、ローズゴールド(BR)など、ケース素材の異なるバリエーションも存在します。中古市場で個体を探す場合は、ケース素材だけでなく、搭載キャリバーや文字盤、付属品、整備履歴なども個体ごとに確認する必要があります。
ブレゲ クラシック5907 ホワイトゴールド :TS Trading Co Ltd
📌代表的な5907BA/12/984の基本仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| コレクション | クラシック |
| 型番 | 5907BA/12/984 |
| ケース素材 | 18Kイエローゴールド |
| ケース径 | 34mm |
| ケース厚 | 7.6mm |
| ムーブメント | Cal.511DR |
| 巻き上げ方式 | 手巻き |
| 機能 | スモールセコンド、パワーリザーブ |
| 風防・裏蓋 | サファイアクリスタル |
| 防水性能 | 3気圧 |
| 文字盤 | シルバー、手作業によるギヨシェ |
| ベルト | アリゲーター |
※上表はブレゲ公式の5907BA/12/984に記載された仕様を基準としています。5907BBや5907BRなど、ケース素材や仕様の異なるバリエーションがあります。
ここで重要なのは、5907を単一の仕様として捉えないことです。同じRef.5907でも製造時期によって搭載ムーブメントが異なるため、中古個体を比較するときには型番だけでなく、実際に搭載されているキャリバーまで確認する意味があります。この点は後ほど詳しく見ていきます。
ブレゲ 5907のムーブメントと前期・後期の違い

5907には、製造時期によってCal.510DRとCal.511DRの2種類の手巻きムーブメントが確認されています。両者は振動数やパワーリザーブだけでなく、ムーブメントの外観にも違いがあり、中古個体を比較する際の重要なポイントになります。
前期型はCal.510DR、後期型はCal.511DR
5907の前期型にはCal.510DR、後期型にはCal.511DRが搭載されたとする資料が複数確認されています。振動数やパワーリザーブについても世代による違いが確認されており、Cal.510DRは28,800振動/時・約72時間、Cal.511DRは21,600振動/時・約95時間とする資料が多く見られます。
| 前期型 | 後期型 | |
|---|---|---|
| キャリバー | Cal.510DR | Cal.511DR |
| 巻き上げ方式 | 手巻き | 手巻き |
| 振動数 | 28,800振動/時 | 21,600振動/時 |
| パワーリザーブ | 約72時間 | 約95時間 |
| 特徴 | FP1150をベースとした手巻き仕様とされる | フラットなブリッジを備える |
Cal.510DRについては、フレデリック・ピゲCal.1150をベースに、自動巻き機構を取り除いて手巻き式に改良したものとする資料があります。一方、Cal.511DRではムーブメントのブリッジ形状が変更され、シースルーバックから見た外観にも違いがあります。
なお、Cal.511DRのパワーリザーブについては、資料によって記載に違いがあります。5907を確認する際には、この点も含めて仕様を見ていく必要があります。
パワーリザーブの表記には45時間と約95時間の違いがある
5907のムーブメントについて、確認しておきたいのがパワーリザーブの表記です。
ブレゲの旧製品ページとして現在も確認できる5907BA/12/984のページでは、Cal.511DRについて「Gangreserve 45 Stunden(パワーリザーブ45時間)」、振動数4.00Hzと記載されています。
ところが、2007年のAntiquorumオークション資料では、Ref.5907のCal.511DRについて約95時間のパワーリザーブ、ダブルバレルなどが記載されています。さらに現在の専門流通資料でも、Cal.511DRを21,600振動/時、約95時間とする記載が複数確認できます。
つまり、現時点で確認できる資料には次のような食い違いがあります。
- ブレゲ旧公式ページ:45時間・4.00Hz
- 2007年のAntiquorum資料:約95時間
- 複数の専門流通資料:約95時間・21,600振動/時
なぜ公式ページに異なる数値が残っているのかについて、現在公開されている資料だけから理由を特定することはできません。そのため、本記事では45時間の記載を「公式の誤表記」とは断定せず、Cal.511DRについて資料間に仕様表記の不一致が存在すると整理します。
5907の中古個体を確認する際には、販売ページに記載されたスペックだけで判断せず、キャリバーの写真や個体資料も合わせて確認すると、こうした情報の混在を切り分けやすくなります。
ブレゲ 5907と5157の違い
5907と5157はいずれもブレゲのクラシックコレクションに属し、伝統的な意匠を共有するモデルです。一方で、ケースサイズやムーブメント、秒表示の位置などには違いがあり、時計としての性格はそれぞれ異なります。
5907と5157はサイズと構成が異なる
両モデルを比べる際に分かりやすいのが、ケースサイズとムーブメントの構成です。5907は34mm前後の手巻きモデルであるのに対し、5157は38mmのケースに自動巻きムーブメントを搭載しています。
ブレゲ クラシック 5157 5157BB/11/9V6:Jewel&Watch Supply
| 5907 | 5157 | |
|---|---|---|
| ケースサイズ | 34mm前後 | 38mm |
| 巻き上げ方式 | 手巻き | 自動巻き |
| 秒表示 | スモールセコンド | センターセコンド |
| パワーリザーブ表示 | 裏側に配置 | なし |
| ケースの印象 | 小径で端正なサイズ感 | やや大きめで現代的なサイズ感 |
5907では、スモールセコンドを文字盤の6時位置に配し、裏側からはムーブメントとパワーリザーブ表示を確認できます。一方の5157は、文字盤上に時・分・秒を備えたシンプルな三針構成で、センターセコンドを採用しています。
この違いによって、同じクラシックコレクションでも、5907は小径の手巻き時計として、5157は38mmというケースサイズと自動巻き機構を備えたクラシックウォッチとして、それぞれ異なる方向性を持っています。
5907を選ぶかどうかは小径のクラシック感がポイント
5907と5157の違いは、単純なスペックの優劣というより、時計に求めるサイズや操作感の違いとして考えると分かりやすくなります。
5907が向いているのは、次のような好みを持つ場合です。
- 34mm前後の小ぶりなケースを好む
- 手巻き時計ならではの操作を楽しみたい
- スモールセコンドの文字盤構成に魅力を感じる
- 裏側のムーブメントやパワーリザーブ表示も楽しみたい
一方、5157は38mmのケースと自動巻き機構を備えているため、5907より大きめのケースと自動巻きという構成を求める場合に比較対象となるモデルです。
5907を検討する際に5157と迷った場合は、ケースサイズだけでなく、手巻きと自動巻きの違い、秒針の配置、裏側まで含めた時計の楽しみ方を比較すると、自分の好みに合う方向が見えやすくなります。
ブレゲ 5907を中古で選ぶときのポイント

生産終了から時間が経った5907では、同じリファレンスでも個体によって状態や整備履歴が異なります。中古で選ぶ際は、ムーブメントや外装だけでなく、これまでの整備状況と購入後のメンテナンスまで確認しておくと、個体の違いを把握しやすくなります。
キャリバーと個体の仕様を確認する
5907にはCal.510DRとCal.511DRの個体が存在するため、中古品を比較するときは、まず搭載ムーブメントを確認しておきたいところです。
販売ページではリファレンスだけが記載され、キャリバーまで明示されていない場合もあります。ムーブメントの写真が掲載されているなら、販売店の説明と照らし合わせて確認するとよいでしょう。
また、5907は資料によって仕様の記載に違いが見られるため、販売ページのスペックだけで判断しにくい場合は、ムーブメントの写真や販売店が保有する個体資料など、複数の情報を照合することが重要です。
5907のように仕様の異なる世代が存在するモデルでは、単に「5907だから同じ」と考えるのではなく、目の前にある個体がどの仕様なのかを確認することが、中古購入では大切になります。

左下にCAL.511DRと刻まれている(商品ページに拡大写真あり)
ブレゲ クラシック 5907BA イエローゴールド:かんてい局熊本店
ケース・ギヨシェ・針の状態を見る
5907では、ケースや文字盤に施された仕上げそのものが時計の印象を左右します。中古品では、写真から確認できる範囲だけでも、いくつか見ておきたいポイントがあります。
ケースでは、ラグの形状やコインエッジの状態を確認します。過去に研磨されている個体では、ケース本来の輪郭やエッジが変化している場合があるためです。
文字盤は、ギヨシェの状態やローマ数字、ブレゲ針の状態を確認します。文字盤について修復や交換の履歴がある場合は、現在の仕様だけでなく、その経緯も個体を判断する材料になります。
さらに、シースルーバックから見えるムーブメントについて、販売店が状態や整備内容をどこまで説明しているかも確認しておきたいところです。

ブレゲ クラシック 5907 ホワイトゴールド:TS Trading Co Ltd
整備履歴と販売店の保証を確認する
古い機械式時計では、製造年だけでコンディションを判断することはできません。同じ時期に作られた個体でも、その後の使用状況や整備の内容によって状態は変わるためです。
確認したいのは、オーバーホールや修理をいつ受けたのか、どこで整備されたのか、部品交換が行われているのかといった履歴です。整備記録や明細が残っていれば、現在の状態を判断するうえで参考になります。
また、販売店独自の保証が付く場合は、保証期間だけでなく、対象となる故障や部品、保証の対象外となるケースまで確認しておくと安心です。
整備から長期間経過している個体では、購入後にメンテナンスが必要になる可能性もあります。そのため、表示価格だけで比較するのではなく、整備履歴を含めて個体の状態を見ることが大切です。
生産終了後のメンテナンス体制も確認しておく
5907は生産終了モデルですが、購入後も長く使うことを考えるなら、現在のメンテナンス体制も、購入前に確認したい要素の一つです。
ブレゲは現在、メンテナンスや修理について、推奨サービスセンター、ブレゲ ブティック、正規取扱店などへの依頼を案内しています。公式のコンプリートメンテナンスでは、ムーブメントの分解・洗浄・点検・調整に加え、必要に応じた部品交換、ケースやブレスレットの仕上げ、防水性の更新、最終検査などが行われます。
ただし、現在の公式情報だけから、5907のすべての個体が現行モデルと同じ条件でコンプリートメンテナンスを受けられるとまでは確認できません。実際の受付可否や作業内容は、時計の状態や必要な部品などによって異なる可能性があります。
そのため中古で購入する際は、「生産終了モデルだからメンテナンスできない」と考える必要はありませんが、購入先に整備履歴があるか、過去にどのようなメンテナンスを受けているかを確認しておくと、その後の維持を考えやすくなります。
また、正規サービス以外で整備された個体については、どこでどのような作業を受けたのかが分かれば、それも個体を比較する際の材料になります。
5907を中古で選ぶ際に重要なのは、単純に「古いか、新しいか」ではありません。キャリバー、外装、文字盤、整備履歴、そして今後のメンテナンスまで含めて、目の前の一個体を確認することが、長く付き合える時計を選ぶための判断材料になります。
現在流通している5907は、ケース素材や文字盤、搭載ムーブメント、整備履歴などが個体ごとに異なります。購入を検討する際は、価格だけでなく、仕様やコンディションを比較しながら選ぶとよいでしょう。
ブレゲ 5907はどんな人に向いている?

ブレゲ 5907は、現行モデルとは異なる小径のクラシックな佇まいと、手巻きならではの機械式時計らしさを楽しめるモデルです。生産終了から時間が経っているため、現在は中古市場から個体を探すことになります。ここでは、5907の特徴を踏まえ、どのような好みの人と相性がよいのかを整理します。
小径のクラシック時計を好む人
5907は、現代のドレスウォッチに多く見られる大きめのケースとは異なり、34mm前後のサイズ感を持つモデルです。腕元で強く存在感を出す時計よりも、装着したときの収まりや、古典的なプロポーションを重視する人に適しています。
特に、ケース径の数字だけでなく、文字盤とケースのバランスまで含めて時計を選ぶ人にとっては、この小ぶりなサイズが5907の個性として映るでしょう。現在の基準では小さく感じる可能性もありますが、それも含めてクラシックウォッチらしい魅力と捉えられるかどうかが、一つの判断材料になります。
手巻き時計を楽しみたい人
5907は、時計を身につけるだけでなく、日々の巻き上げを含めて機械式時計との時間を楽しみたい人に向いています。
自動巻きの利便性よりも、時計を手に取り、状態を確かめながら使うことに価値を感じる人であれば、手巻きという選択そのものが5907を選ぶ理由になります。特に、時計の操作やムーブメントとの距離の近さを楽しみたい場合には、現代的な実用時計とは異なる付き合い方ができるでしょう。
一方で、日常的な手間をできるだけ減らしたい場合は、同じクラシックコレクションでも自動巻きの5157などと比較すると、自分の使い方との違いが見えやすくなります。
中古の生産終了モデルをじっくり選びたい人
5907は生産終了モデルのため、現在購入する場合は中古市場に流通する個体から選ぶことになります。そのため、現行モデルのように仕様を確認して新品を選ぶというより、一つひとつの個体を見比べながら探す楽しみがあります。
同じ5907でも、ケースやギヨシェ文字盤の状態、これまでの整備状況などは個体によって異なります。購入時には、価格だけで決めるのではなく、前章で紹介したキャリバーや外装、整備履歴なども含めて確認することが大切です。
現行モデルにはないサイズ感や、過去のブレゲならではの仕様に魅力を感じ、時間をかけて自分に合う一本を探したい人には、5907の中古購入は相性のよい選択肢といえるでしょう。
まとめ|ブレゲ 5907は「小さなケースにブレゲらしさを凝縮した一本」

ブレゲ 5907は、2000年代に展開された生産終了モデルです。現行モデルとは異なる小径のケースとクラシックな意匠を備え、現在は主に中古市場で探すことになります。
5907を選ぶ際に押さえておきたいポイントは、次のとおりです。
- 5907は2000年代に展開された生産終了モデル
- 約34~35mmの小径ケースとブレゲらしい意匠が特徴
- Cal.510DRとCal.511DRの世代差がある
- Cal.511DRは複数の同時代・専門資料で約95時間と確認できる
- 中古ではスペック表だけでなく個体の状態を確認することが重要
特に中古の5907は、同じモデル名でもキャリバーや外装、整備状況などに違いがあります。購入を検討する際は、掲載されているスペックだけで判断せず、実際の個体について確認することが大切です。
小径のクラシック時計を好む人にとって、5907は現在のラインアップとは異なる魅力を持つモデルです。時間をかけて個体を見比べながら、自分に合う一本を探す楽しさも、この時計の魅力の一つといえるでしょう。

FAQ|ブレゲ 5907に関するよくある質問
最後に、ブレゲ 5907について確認しておきたいポイントを、よくある疑問として簡潔にまとめます。
- ブレゲ 5907は生産終了していますか?
-
はい。ブレゲ 5907は2000年代に展開されたモデルで、現在は生産終了となっています。購入する場合は、中古市場に流通している個体から選ぶことになります。
- ブレゲ 5907のムーブメントは何ですか?
-
5907には、世代によってCal.510DRとCal.511DRが搭載されています。Cal.511DRについては、ブレゲの旧公式ページに45時間、2007年のAntiquorum資料などに約95時間と異なる記載があるため、資料による表記差があります。
- ブレゲ 5907は中古で何を確認すればよいですか?
-
キャリバーだけでなく、ケースやギヨシェ文字盤などの外装状態、整備履歴、販売店の保証まで確認することが重要です。特に生産終了モデルのため、掲載されているスペックだけでなく、購入する個体そのものを確認しましょう。
参考・出典
ブレゲ公式
- Breguet|Classique
https://www.breguet.com/ja/%E6%99%82%E8%A8%88/classique - Breguet|コンプリートメンテナンスサービス
https://www.breguet.com/ja/sahisu/konfuritomentenansusahisu
ブレゲの公式メンテナンス工程、サービス内容、作業範囲に関する注意事項を確認する際に参照しています。 - Breguet|カスタマーサービス
https://www.breguet.com/ja/sahisu/kasutamasahisu
ブレゲの推奨サービスセンター、ブティック、正規取扱店など、メンテナンス・修理の依頼先に関する情報を確認しています。
オークション・専門資料
- Antiquorum|Breguet Ref. 5907, Lot 183(2007年12月5日)
https://catalog.antiquorum.swiss/en/lots/breguet-lot-179-183
2007年のオークション資料。Ref.5907、Cal.511 DR、約95時間のパワーリザーブ、35mmケースなどの記載を確認しています。 - Antiquorum|Breguet Ref. 5907, Lot 131(2007年6月14日)
https://catalog.antiquorum.swiss/en/lots/breguet-lot-165-131
2007年のオークション資料。Ref.5907、Cal.511 DR、約95時間のパワーリザーブ、35mmケースなどの記載を確認しています。

