憧れの高級時計を手にする時、私たちの頭をよぎるのは「手に入れた後のこと」ではないでしょうか。
精緻なメカニズムが刻む時音に魅了される一方で、数年おきにやってくる高額なメンテナンス費用や、日々の時刻合わせの手間を「少しバカバカしい」と感じてしまうのは、決してあなただけではありません。
2025年現在、腕時計の世界では大きな地殻変動が起きています。主要ブランドによる保証期間の劇的な延長や、驚異的な耐久性を誇る新素材の採用など、「所有者の負担を減らす」ための技術革新がかつてないスピードで進んでいるのです。
しかし、ここで一度立ち止まって考える必要があります。
「メンテナンスフリー」という言葉の響きに惹かれて時計を選んだ結果、
数年後に思いもよらない修理見積もりに驚く
……といった後悔は避けなければなりません。
本記事では、時計専門ブログとしての独自の視点から、2025年12月時点の最新公式データに基づき、高級時計におけるメンテナンスの「理想と現実」を解き明かします。あなたが求める「手間のかからない最高の相棒」を見つけるための、具体的かつ誠実な指針をここに提示しましょう。
※公式条件は国や個体により異なるため、購入前に最新情報の確認を推奨します。
- 高級時計は完全な無整備ではない実情
- 長期点検サイクルの最新トレンド
- 維持費と保証延長の判断基準
高級時計の基礎を整理したい方は、こちらの入門ガイドもあわせてご覧ください。
「高級時計って何が違う?」基礎解説(ブランド価格帯・価値観・選び方)
高級時計におけるメンテナンスフリーに対する誤解と知っておきたい真実

高級時計の世界において「メンテナンスフリー」という言葉は、非常に魅力的に響きます。
しかし、結論から申し上げれば、機械式であれクォーツ式であれ、完全に手入れが不要な時計は公式には存在しないと考えるのが正確です。クォーツやソーラー時計でも蓄電池交換や防水点検などの定期的ケアは必要になります。私たちが手にするのは「永遠に動き続ける魔法の機械」ではなく、きわめて精密な「物理的装置」だからです。
ここでは、なぜメンテナンスが不可欠なのか、そして近年注目されている「長期保証」の真実について紐解いていきます。
なぜ「完全にメンテナンス不要」な時計は存在しないのか?
高級時計の内部では、目に見えないほど小さなパーツが驚くべき速さで動き続けています。
例えば、一般的な機械式時計の心臓部(テンプ)は、1日に数十万回もの往復運動を繰り返します。この過酷な動作を支えるために不可欠なのが「潤滑油」ですが、この油は時間の経過とともに必ず酸化し、乾いてしまいます。
潤滑油が切れた状態で時計を動かし続けると、金属パーツ同士が直接こすれ合い、微細な金属粉が発生します。
これが研磨剤のような役割を果たし、さらにパーツを摩耗させるという悪循環に陥るのです。
また、もう一つの見落としがちな要素が「防水パッキン」の劣化です。
裏蓋やリューズに使用されるパッキンは最新技術で耐久性が向上していますが、経年による硬化・劣化自体を完全に防ぐことはできません。パッキンが弾力を失えば、湿気や埃が内部に侵入し、ムーブメントに致命的なダメージを与える原因となります。
「高級時計のオーバーホールをしないとどうなるか」
という問いへの答えは、
単に時間が狂うだけではありません。
最終的には内部に錆が発生し、本来であれば数万円の清掃で済んだはずが、数十万円規模のパーツ交換が必要になる、あるいは修復不能な状態にまで追い込まれるリスクを孕んでいるのです。
2025年最新トレンド:ブランド公式の「保証延長」をどう読むか
近年、高級時計業界ではユーザーの不安を払拭すべく、保証制度の拡充や素材・機構の改善によって所有者の負担を軽減する動きが進んでいますが、『驚異的な耐久性』や『完全な手入れ不要』という技術的革命が全モデルで実現しているわけではありません。
| ブランド名 | 保証期間(2025年時点) | 備考 |
|---|---|---|
| IWC | 最大8年 | 「My IWC」プログラム登録が条件 |
| カルティエ | 最大8年 | 「Cartier Care」登録で国際保証を最大8年へ延長可。ただし対象は製造不具合で、消耗部品や定期メンテナンスは別途。 |
| パネライ | 最大8年 | 「Pam.Guard」登録により保証延長可。名称・適用条件は国や正規代理店により異なる場合あり。 |
| ロレックス | 5年 | 特別な登録不要で全モデル対象 |
| オメガ | 5年 | 全モデル対象 |
ご検討の際は、購入予定店舗で最新の適用内容をご確認ください。
国際保証の延長は『不具合対応の期間』であり、保証期間中にメンテナンス不要という意味ではありません。メンテナンス需要とは別の概念です。しかし、ここで注意が必要なのは、
保証延長の対象となるのは
あくまで「製造上の不備」による不具合である
という点です。
例えば、IWCの公式規約でも触れられている通り、通常の使用に伴うパーツの摩耗や、不適切な取り扱いによる故障は保証の対象外となります。
つまり、保証期間が8年に延びたからといって、8年間オーバーホールをせずに使い続けても良い、ということと同義ではありません。
ブランド側が保証を延ばしているのは、自社の品質に対する自信の表れであり、万が一の際の「安心」を担保するものです。
メンテナンスフリーという言葉を「何もしなくて良い」と捉えるのではなく、「長期にわたってブランドが責任を持ってサポートしてくれる体制が整っている」と解釈するのが、賢明な時計選びの第一歩と言えるでしょう。
メンテナンスの手間を最小化する!駆動方式別の賢い選び方

「せっかくの休日、久しぶりに時計を着けようと思ったら止まっていた」
「毎日の時刻合わせが面倒」
こうした日常のストレスを最小限に抑えることが、高級時計におけるメンテナンスフリーの第一歩です。
2025年時点の一般的な傾向として、実用性を重視する選択肢は大きく分けて3つあります。それぞれの「本当の手間」を比較してみましょう。
【ソーラー・GPS電波】電池交換の悩みから解放される実用最強の選択

セイコーグローバルブランドコアショップ専用モデル 出典:セイコー公式
「電池交換不要」という言葉に最も近いのが、カシオの「オシアナス」やセイコーの「アストロン」に代表される高級ソーラー電波・GPS時計です。光がある限り動き続け、標準電波やGPS衛星からの信号で時刻を自動修正するこのタイプは、まさに「実用最強」の名にふさわしい存在と言えます。
しかし、ここで知っておくべきは「二次電池(充電池)」の寿命です。
カシオやセイコーの公式データによれば、
二次電池は充放電を繰り返すことで徐々に劣化し、
一般的に7〜10年程度で蓄電能力が低下
します。
「充電してもすぐに止まる」という症状が現れたら、二次電池の交換時期です。
また、精密な電子回路を搭載しているため、機械式時計のような「100年使い続ける」という思想とは異なり、メーカーやモデルによっては、部品の供給期間に明確な期限が設定されている場合があります。
特に古いモデルでは修理可能期間に制約が出るケースもあり、その点は購入時に確認しておくと安心です。
普段使い向けの実用時計を探している方はこちら。
【完全決着】セイコー アストロン vs シチズン アテッサ
【クォーツ】数年に一度の「予定されたケア」で済む安心感

「精度は譲れないが、数十年単位で長く愛用したい」。そんな方に最適なのが、グランドセイコーの「9Fクォーツ」のような最高峰のクォーツ式時計です。
一般的なクォーツ時計が使い捨てに近い構造であるのに対し、9Fクォーツは「一生もの」として設計されています。
特筆すべきは、ムーブメントの保油性を高める「高気密構造」です。これにより、
公式には電池寿命は約3年ですが、
内部の潤滑油を長持ちさせることができ、
オーバーホールの推奨周期は約6〜8年
と、通常のクォーツよりも長く設定されています。
「3年に一度、数千円の電池交換が必要」という点は、裏を返せば「その頻度で必ずプロの目に触れる機会がある」ということです。突発的な故障リスクを抑え、計画的に維持できる点では、最も合理的な選択肢と言えるでしょう。
高精度クォーツの選び方とメリットを詳しく解説しています。
【一生モノ?】グランドセイコー 9Fクォーツ
【機械式】最新技術が変える「一生もの」の維持サイクル
伝統的な機械式時計(自動巻き・手巻き)は、かつては3〜5年ごとのオーバーホールが常識でした。しかし、2025年現在の最新モデルでは、素材や設計の改良により、より長い「点検・オーバーホール周期の目安」を前提とした設計・品質管理が一般的になりつつあります。
例えばロレックスは、公式に具体的な年数を一律で示しているわけではありませんが、業界では「使用状況にもよるが、おおよそ10年以内を目安に点検・オーバーホールを検討する」というガイドラインが広く共有されています。
公式案内でも、防水性能の保持や使用環境に応じた点検の重要性が強調されています。
また、オメガの「コーアクシャル・エスケープメント」搭載モデルは、摩耗を抑える構造によってメンテナンス負荷の低減が期待される設計となっており、従来よりも長いメンテナンス周期を前提としたモデルとして位置づけられています。
さらに、近年ではシリコン製パーツの採用により、故障の大きな原因だった「磁気帯び」への耐性が劇的に向上しました。
これにより、日常的にスマートフォンやPCに囲まれている現代社会でも、かつてほど神経質にならずに済むようになっています。
| 駆動方式 | メンテナンスのメリット | 2025年現在の「本当の手間」 |
|---|---|---|
| ソーラーGPS | 時刻合わせ・電池交換が不要 | 約10年で二次電池の交換・点検が必要 |
| 高級クォーツ | 圧倒的な高精度と安定感 | 3年ごとの電池交換が「健康診断」になる |
| 最新機械式 | 資産価値とロマンの両立 | 点検の目安が10年程度まで長期化している |
どの方式を選んだとしても、メンテナンスの手間が「ゼロ」になることはありません。大切なのは、自分のライフスタイルにおいて「どの程度の手間なら愛着を持って許容できるか」という基準で選ぶことなのです。
ライフスタイル別・後悔しない「一生もの」の選び方

高級時計選びにおいて「メンテナンスの手間」をどう捉えるかは、その方のライフスタイルによって正解が異なります。10万円クラスから300万円を超えるハイエンドな世界まで、価格帯や個人の価値観に応じた「後悔しない基準」を整理してみましょう。
どのタイプの人に「メンテナンスフリー」は向いているか?
人によって「手間」と感じるポイントは異なります。
ご自身の性格や日常のルーティンに照らし合わせて、最も相性の良いタイプを確認してみてください。
とにかく「手間」を減らしたい実務派:ソーラー or 9Fクォーツ
朝の忙しい時間に時計が止まっているストレスを避けたい、あるいは「止まるたびに時刻を合わせるのが苦痛」という方には、ソーラー駆動やグランドセイコーの9Fクォーツが最適です。これらのモデルは「道具としての完成度」が非常に高く、持ち主の時間を奪わないという究極のサービスを提供してくれます。
「維持費」を抑えて長く楽しみたい堅実派:メジャーブランドのクォーツ
高級時計のステータスは欲しいけれど、数年ごとに10万円単位のオーバーホール費用を払うのは「バカバカしい」と感じてしまうかもしれません。その場合は、ロンジンやタグ・ホイヤー等のクォーツモデルは維持費の負担が比較的小さい選択肢として考えられますが、ブランドごとに価格・サービス体系が異なるため、購入前に具体的なメンテナンス料金や保証条件を確認することが重要です。
「一生もの」を育て上げたいロマン派:機械式 × 長期オーバーホール推奨ブランド
ゼンマイの動きに愛着を感じつつも、できるだけ修理回数を減らしたいなら、オメガ(コーアクシャル搭載)やロレックスなど、ブランド側が「約10年を目安とする長期的なメンテナンス運用」を前提とした設計・品質評価がなされているブランドを選びましょう。最新の機械式時計は、適切に扱えば「10年単位のパートナー」として、非常に安定したパフォーマンスを発揮してくれます。
一生ものの時計をメンズ・レディースで見極める基準
「一生使える時計」を選ぶ際、価格だけでなく「メーカーの修理体制」をセットで考えることが重要です。
例えば、メンズ・レディース共に人気の高いカルティエやロレックスは、世界中にサービス拠点を持ち、数十年以上前のモデルでも修理を受け付ける「部品供給の継続性」が非常に高いことで知られています。
逆に、あまりにニッチな独立系ブランドや、流行を追ったファッション性の強いモデルは、10年後、20年後に「パーツがないため修理不能」と言われるリスクがあることを念頭に置かなければなりません。
また、「300万円の時計は年収いくらから着けるべきか?」という議論もよく耳にしますが、大切なのは年収そのものよりも、その時計を維持するための「ランニングコスト」を許容できるかどうかです。
300万円のクロノグラフを所有する場合、10年前後で訪れる20万円前後のオーバーホール費用を「相棒をリフレッシュさせるための喜びのコスト」と捉えられるなら、それはあなたにとっての適正な選択と言えます。
タモリ氏に学ぶ「実用時計」の選び方
腕時計の選び方において、一つの究極の形を示しているのがタモリ氏です。彼は非常に高価な時計を所有しながらも、テレビ番組などの日常シーンではカシオのデータバンクや、シンプルで視認性の高い実用的な時計を愛用していることが知られています。
これは「高級であれば良い」という短絡的な視点ではなく、その場その場の「目的」に最も適した時計を選ぶという、大人の美学を感じさせます。メンテナンスフリーを追求することは、決して妥協ではなく、「自分の時間を最も効率的、かつ美しく管理する」という高度な知性の表れでもあるのです。
「良い時計を買うと人生が変わる」と言われるのは、高価なものを身に着けるからではなく、自分の時間や持ち物に対して「責任と愛着」を持つようになるからです。自分にとってのメンテナンスの許容範囲を知ることは、人生を共にする最高の相棒を見極めることに直結しています。
中古・並行輸入で購入する場合のメンテナンス注意点

高級時計を手に入れる際、少しでも予算を抑えるために「並行輸入」や「中古」を選択肢に入れる方は多いでしょう。しかし、ここで最も注意すべきなのが「購入時の価格差が、後のメンテナンスコストで逆転してしまうリスク」です。
2025年時点の一般的な傾向として、ブランド各社のアフターサービス方針はより明確化されており、購入ルートによって受けられる恩恵に大きな差が出る場合があります。
購入価格は安くても「維持費は新品と同じ」という現実
まず理解しておくべきは、時計を安く手に入れたとしても、メーカーが提供する「正規オーバーホール料金」は、新品で買った人も中古で買った人も(基本的には)変わらないという点です。
特に中古品の場合、たとえ外装が新品同様に磨き上げられていたとしても、内部のムーブメントが最後にいつメンテナンスされたかは不透明なケースが多々あります。購入してすぐに「時間が大きく狂う」「止まる」といった症状が出て、いきなり10万円以上の修理費が必要になることも珍しくありません。
また、中古販売店が独自に付けている「自社保証」についても正しく理解しておく必要があります。
多くの場合、販売店の保証対象は「自然故障(ムーブメントの不具合)」に限定されており、
「定期的なオーバーホール」や
「パッキンなどの消耗品交換」は
保証対象外(実費)となるのが一般的
です。
「保証があるから安心」と楽観視せず、中古で購入する際は「初回オーバーホール費用」を予算に組み込んでおくのが賢明です。
「並行差別」が存在するブランドと最新の状況
並行輸入品(海外の正規販売店等から仕入れられた本物だが、日本の正規代理店ルートを通っていない個体)に対するアフターサービス条件は、2025年現在もブランドや代理店の方針によって異なります。
特に、修理受付の可否やメンテナンス料金が、正規購入品と同一にならない場合があるという点は、購入前に把握しておくべき重要ポイントです。
| メンテナンス条件(傾向) | 主な該当ブランド例(2025年時点の一般認識) |
|---|---|
| 並行輸入品で料金が高くなる、または受付条件が厳しい場合がある | タグ・ホイヤー、ブライトリング、ゼニス、フランクミュラー など |
| 正規・並行で大きな料金差が出にくいとされるケースが多い | ロレックス、オメガ、パテック・フィリップ、ジャガー・ルクルト、IWC など |
とくに LVMHグループ傘下の一部ブランドやブライトリング等では、正規購入者向けの優遇価格や会員プログラムが設けられているケースがあり、結果として
並行輸入品の修理・オーバーホール費用が正規購入品より割高になる事例が報告されている
という傾向が指摘されています。
「メンテナンスフリー」を重視して維持コストを抑えたい場合は、
- 検討中ブランドの 並行品の受付条件
- 正規・並行で料金差が生じる可能性
- 保証カードの内容・記載国
を事前に確認しておくことが重要です。
一方で、差が小さい(または事実上差が出にくい)ブランドであれば、並行輸入はコスト面で魅力的な選択肢になる場合もあります。逆に、料金差が大きくなり得るブランドでは、長期的な総所有コストの観点から、正規購入を選んだ方が結果的に安心・有利になるケースもあります。
なお、実際の受付条件や料金は、同一ブランドでも「年代・モデル・受付窓口・国」などによって異なる場合があります。具体的な条件は、購入前に最新情報を正規窓口へ確認することを推奨します。
すでに「メンテナンス時期」が迫っている個体を見極める
中古や並行在庫品を購入する際は、製造年(シリアルナンバーや保証書の日付)を必ずチェックしてください。
例えば「未使用品」として販売されていても、製造からすでに5年以上経過している場合、内部のオイルは酸化し始めている可能性があります。「使っていない=新品同様に動く」わけではないのが精密機械の難しいところです。
2025年時点の一般的な傾向として、メーカーの保証期間内(例:8年保証の期間内)であっても、前オーナーが保証登録を済ませているかどうか、あるいは名義変更が可能かといった条件によって、アフターサービスの質が変わるブランドも増えています。
「安く買う」ことと「安く維持する」ことは別物であると心得て、出口戦略(メンテナンス)まで見据えた購入ルートの選択を行いましょう。
お気に入りの1本を長持ちさせる「日常の最小ケア」アドバイス

「メンテナンスフリー」という理想に近づくための最も近道は、メーカーに頼る回数を減らすこと、つまり「時計にダメージを与えない習慣」を身につけることです。
2025年現在、デジタルデバイスに囲まれた私たちの生活環境は、実は高級時計にとってかつてないほど過酷なものとなっています。ここでは、わずか1分の工夫で時計の寿命を延ばす、具体的かつ効果的なメソッドをご紹介します。
故障の3大要因「磁気・汗・衝撃」を避ける具体策
高級時計が不調に陥る原因の多くは、「磁気・汗・衝撃」の3つに集約されます。
現代において最も警戒すべきは「磁気帯び」
スマートフォン、タブレット、ノートPC、果てはバッグのマグネット留め具など、私たちの身の回りには強力な磁石が溢れています。
特に機械式時計の場合、内部の細かなパーツが磁気を帯びると、精度が極端に悪化したり止まったりします。
オメガの「マスター クロノメーター」のように15,000ガウス以上の耐磁性能を持つモデルであれば安心ですが、一般的な時計であれば、
デジタルデバイスから最低でも5cm、
できれば10cm以上離して置く
ことを習慣にしましょう。
これだけで、原因不明の「時間の狂い」を劇的に減らすことができます。
「汗」対策は「外したら拭く」
汗に含まれる塩分や酸は、外装の金属を腐食させるだけでなく、防水パッキンの劣化を早めます。
最も効果的なケアは、
「外したら拭く」という極めてシンプルな行動
です。
マイクロファイバーやセーム革などの柔らかい布で、裏蓋やブレスレットの隙間に残った皮脂を優しく拭き取るだけで、サビや悪臭の発生を未然に防げます。
「衝撃」の蓄積
高級時計のムーブメントは驚くほど繊細です。
ゴルフやテニスといった腕に強い振動が伝わるスポーツ時には、
たとえスポーツモデルであっても外す
のが賢明です。
目に見える破損がなくても、微細な衝撃の蓄積が数年後の大きな故障につながることは少なくありません。
年1回の「簡易点検」が、将来の巨大な出費を防ぐ
「完全に止まるまで何もしない」ことが、最もメンテナンスコストを高くしてしまう原因です。
そこで推奨したいのが、数年に一度のオーバーホールを待たずに行う、毎年の「セルフ健康診断」です。
- リューズの動作確認
- ゼンマイの巻き上げ感に変な抵抗はないか、時刻合わせの際に滑るような感覚はないかをチェックします。
- 防水性の「保険」としてのパッキン確認
- ネジ込み式リューズの場合、しっかりと最後まで締まっているかを定期的に確認しましょう。
- もし少しでも緩みを感じたり、ガラスの内側が曇ったりした場合は、すぐに専門のサービスセンターへ持ち込んでください。
- 内部に水が入ってからでは、修理費用は数倍に跳ね上がります。
革ベルトは「消耗品」と割り切り、ローテーションで守る
「一生もの」の時計であっても、革ベルトだけは例外的に消耗品です。特に日本の夏は多湿なため、一本を毎日使い続けると1年も持たずに傷んでしまいます。
革ベルトの寿命を延ばすコツは、
「一日使ったら二日休ませる」というローテーション
です。休ませている間に革に含まれた湿気が抜け、繊維が守られます。
また、
汗をかくシーズンだけは、
ステンレス製のブレスレットや、ラバー、
ナイロンストラップ(NATOベルト)に付け替える
ことも、本体の清潔さを保つための非常に賢い運用術です。
日常のほんの少しの配慮が、10年後のメンテナンス見積もりを最小限に抑えるための最大の武器となります。
「メンテナンスフリー」を待つのではなく、自らの手で「手のかからない名機」へと育て上げていく。それこそが、高級時計を所有する醍醐味の一つではないでしょうか。
まとめ:あなたにとっての「フリー」を見つける

高級時計の世界において、本当の意味での「メンテナンスフリー」とは、ただ「何もしなくてよいこと」を指すのではありません。それは、自分のライフスタイルに最も適した駆動方式を選び、信頼できるブランドのサポート体制を味方につけ、そして日常のささやかなケアを通じて、時計との良好な関係をデザインすることに他なりません。
2025年現在、私たちが選べる選択肢はかつてないほど豊かになっています。
- 「時間」と「手間」を究極に効率化したいなら
- 最新のソーラーGPSや高精度クォーツ(例:グランドセイコー9F)は日常の精度と利便性に優れていますが、いずれも定期的な点検や蓄電池の劣化への対応は必要です。
- 「長く受け継ぐ価値」と「維持のしやすさ」を両立したいなら
- ロレックスやオメガのように、メンテナンス周期の長期化と盤石なアフターサービスを両立させている機械式ブランドが最良のパートナーとなります。
- 「賢く手に入れたい」と願うなら
- 並行差別の有無や中古保証の範囲を正しく理解し、購入ルートを戦略的に選ぶ知性が必要です。
「メンテナンスがバカバカしい」と感じる瞬間があるかもしれません。
しかし、数年に一度のリフレッシュを経て、再び力強く時を刻み始める時計を手に取ったとき、それは単なる道具を超えた、あなた自身の歴史を共有する唯一無二の存在になっているはずです。
「メンテナンスフリー」という言葉に隠された真実を知った今、あなたはもう、見かけ倒しの言葉に惑わされることはありません。あなたの腕元で、この先何十年と美しく正確な時を刻み続ける相棒は、あなたの価値観の延長線上に必ず存在しています。
本記事が、あなたが後悔のない選択をし、時計と共に歩む豊かな人生をスタートさせる一助となれば幸いです。
よくある質問(FAQ)
- 高級時計に「完全なメンテナンスフリー」はありますか?
-
ありません。 時計は精密機械であり、潤滑油や防水パッキンは経年劣化します。
ただし最新モデルでは点検周期が長く・手間が少ない設計のものがあります。 - ソーラー時計でもメンテナンスは必要ですか?
-
必要です。 二次電池は一般的に7〜10年で交換目安です。
- 機械式時計をオーバーホールしないとどうなりますか?
-
精度悪化・部品摩耗・故障リスク増大につながります。
結果として修理費が高額化する可能性があります。 - 並行輸入品は修理や保証が不利になりますか?
-
ブランドによっては修理費が割高になる場合があります。
購入前に修理条件と保証範囲の確認が必須です。 - 中古店の「自社保証」でオーバーホールは無料ですか?
-
いいえ。 多くの場合、オーバーホールは保証対象外です。
- ロレックスやオメガは何年ごとに点検すべきですか?
-
一般的には7〜10年周期が目安とされています。
使用環境や防水性能の劣化具合により前後します。 - 防水時計でも日常点検は必要ですか?
-
必要です。 防水パッキンは経年劣化し、
年1回の防水チェックが推奨されることがあります。 - 使わずに保管していても劣化しますか?
-
はい。 潤滑油の乾燥やパッキン劣化は未使用でも進行します。
- ソーラー時計は暗所保管で故障しますか?
-
長期間の暗所保管は、充電不足や二次電池劣化の原因になります。
- 維持費が不安ならクォーツと機械式どちらが向いていますか?
-
維持費を抑えたい人には高精度クォーツ、
所有満足感を重視する人には機械式が向いています。
出典・参考情報
参考文献・出典一覧(タップで開く)
▶ ブランド公式・保証プログラム
- IWC「My IWC」国際保証延長プログラム(保証延長制度の公式案内)
- IWC International Limited Warranty Extension 条項(延長の条件・最大8年まで)
- Cartier Watch Warranties & Cartier Care(カルティエ公式保証/保証延長の案内)
- Cartier Care プログラム詳細(登録による国際保証延長の公式ページ)
▶ 中古販売店・保証制度
- ジャックロード|メンテナンス&保証案内(保証対象範囲・自社保証の例)
- ジャックロード FAQ|保証・修理対応(中古保証に関するFAQ)
- ジャックロード保証カード 利用規約PDF(保証条件・範囲の詳細資料)
▶ 公式保証・サービス情報
- IWC International Limited Warranty(公式保証のカバー範囲と条件)
▶ ブランド一般情報(保証参考)
- Cartier FAQ|保証・修理に関する公式Q&A(保証内容・サービス案内)

