「グランドセイコー、さすがに値上げしすぎでは?」
ここ数年、こうした声が、時計好きのあいだで少しずつ増えてきました。かつては「頑張れば手が届く国産高級時計」という印象を持たれていたブランドだけに、その変化に戸惑いを覚える人も少なくないでしょう。2024年〜2025年にかけて実施された価格改定は、特にクォーツモデルを中心に大きな変化をもたらしました。
一部モデルで10%を超える上昇が見られ、SNSや口コミでは賛否が分かれています。「品質は理解しているが、価格とのバランスが気になる」「なぜここまで上がったのか理由を知りたい」といった声は、決して特別なものではありません。
ただし、こうした感情的な印象だけで「値上げしすぎ」と結論づけてしまうと、見落としてしまう事実も多く存在します。公式に発表されているデータを丁寧に見ていくと、価格改定はすべてのモデルに一律で行われたわけではなく、対象や上昇率には明確な差があることが分かります。
本記事では、グランドセイコーの価格改定について、善し悪しを断定することを目的としません。公式情報や事実関係を整理しながら、なぜ今このような価格になっているのか、その背景を冷静に読み解いていきます。正しい情報を知ることで、すでに所有している方はより納得感を持って付き合うことができ、これから検討する方も落ち着いて判断できるはずです。
- 価格改定が全モデル一律ではない理由
- 2025年の公式値上げ内容と対象モデルの傾向
- 円安と価格改定が単純連動しない構造
- 値上げ後に冷静に向き合うための考え方の整理
グランドセイコーは本当に値上げしすぎなのか?【公式データで検証】

- 2025年に実施された公式価格改定の概要
- 値上げ率ランキングで見る「上がったモデル/上がっていないモデル」
- 「値上げしすぎ」と感じやすい3つの理由
- なぜSLGW003は「値上げしすぎ」と言われにくいのか
「高くなった」という印象が事実なのか、それとも一部の情報が強調されているだけなのか。この点を見極めるためには、まず公式に発表された価格改定の内容を冷静に整理する必要があります。
ここでは、2025年に実施された最新の価格改定を中心に、どのモデルが、どの程度、どのように変わったのかを具体的に確認していきます。
2025年に実施された公式価格改定の概要
グランドセイコーは、2025年11月4日付で日本国内向けの価格改定を実施しました。これは突発的なものではなく、事前に正規販売店や公式サイトを通じて告知された、正式な価格改定です。
今回の改定で特徴的だったのは、対象モデルが明確に絞られていた点です。主に価格が改定されたのは、以下の系統に属するモデルでした。
- 9Fクォーツを搭載した定番ライン
- 比較的価格帯の低いエントリー寄りのモデル
- 一部のレディースモデル
一方で、ブランドの中核を担うスプリングドライブ搭載モデルや、メカニカルモデルの多くは、今回の改定対象から外れています。つまり、すべてのモデルが一斉に引き上げられたわけではなく、価格改定には明確な「選別」が存在していました。
この点を踏まえると、今回の改定は「ブランド全体の大幅値上げ」というよりも、エントリー層に位置づけられていたモデル群の価格調整と捉えるほうが実態に近いと考えられます。
値上げ率ランキングで見る「上がったモデル/上がっていないモデル」
公式価格表をもとに、改定前後の価格差から算出した値上げ率を見ていくと、モデル間の差はかなり大きいことが分かります。
| モデル系統 | 改定前価格(税込) | 改定後価格(税込) | 上昇率の目安 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| SBGX261 / 263 など | 約30万円 | 約36万円 | 約17% | 9Fクォーツ・37mm |
| SBGP009 系 | 約36万円 | 約39万円 | 約9% | 9Fクォーツ・40mm |
| 一部レディースモデル | 約73万円 | 約77万円 | 約3〜5% | 小幅改定 |
| 多くのスプリングドライブ | ― | ― | 据え置き | 今回の改定対象外 |
| 多くのメカニカルモデル | ― | ― | 据え置き | 今回の改定対象外 |
この表から分かるように、値上げ幅が大きかったモデルが存在する一方で、 価格が変わっていないモデルも多く、改定は一律ではありません。
たとえば、9Fクォーツの中でもベーシックなSBGX系の一部モデルでは、改定前と比べて17%を超える上昇が確認されました。30万円前後で購入できていたモデルが、36万円台に入ったことは、多くの人にとって強い印象を残したはずです。
一方で、同じクォーツ系であっても、モデルによっては上昇率が7〜9%程度に留まっているものもあります。さらに、レディースモデルの中には、3〜5%前後の微増に抑えられているケースも見られました。
また、スプリングドライブやメカニカルモデルの多くは、2025年の改定では価格据え置きとなっています。これらの事実を並べてみると、「大きく上がったモデル」と「ほとんど変わっていないモデル」が混在していることが分かります。
このばらつきこそが、今回の価格改定を理解するうえで重要なポイントです。特定のモデルだけを見ると「かなり上がった」と感じやすい一方で、ブランド全体としては段階的かつ選択的な調整が行われていると言えます。
なお、9Fクォーツは価格だけでなく、長期使用を前提とした設計思想も特徴の一つです。
寿命や維持費について▶「グランドセイコー 9Fクォーツの真の寿命と維持費」
「値上げしすぎ」と感じやすい3つの理由
では、なぜここまで「値上げしすぎ」という印象が広がりやすいのでしょうか。その背景には、いくつかの心理的・構造的な要因があります。
一つ目は、低価格帯モデルほど上昇率が目立つことです。30万円前後のモデルが数万円上がると、率としては10%を超えやすくなります。同じ数万円の上昇でも、価格帯が低いほど「大きく上がった」という印象を与えやすいのです。
二つ目は、比較対象が過去の価格になりやすい点です。とくに2010年代半ばの価格を知っている人にとって、現在の定価は心理的なギャップが大きくなります。実際、同系統のモデルを10年前と比較すると、結果的に1.4倍から1.5倍程度になっているケースもあり、この記憶との落差が違和感につながっています。
三つ目は、一部モデルの印象がブランド全体の評価に広がりやすいことです。SNSや口コミでは、値上げ幅の大きかったモデルが話題になりやすく、その印象が「グランドセイコー全体が大幅に値上げした」という理解に変換されやすい傾向があります。
これらが重なることで、実際の改定内容以上に「値上げしすぎ」という感覚が強調されている可能性があります。
こうした評価が「後悔」に繋がるかどうかは、その人の価値観次第です。
実際に後悔する人には、ある共通点があります。
▶︎ グランドセイコーで後悔する人の共通点とは?
なぜSLGW003は「値上げしすぎ」と言われにくいのか

興味深いことに、グランドセイコーの中でもすべてのモデルが「値上げしすぎ」と同じ文脈で語られているわけではありません。
たとえば、近年注目を集めているSLGW003は、60万円台後半という価格帯に位置するモデルですが、「高くなりすぎた」という声は比較的少ない傾向があります。
この違いは、価格そのものではなく、購入前に想定されている“期待値”の差にあると考えられます。
SLGW003は、
- 新設計の手巻きムーブメント(9SA4)
- 薄型ケースを実現するための設計思想
- 大量生産を前提としない製造体制
といった要素が事前に明確に示されており、購入を検討する段階で「これは価格よりも思想や作り込みを評価するモデルである」という共通理解が形成されています。
一方で、9Fクォーツを搭載したエントリーモデルは、「高精度で、比較的手の届きやすいグランドセイコー」という過去のイメージが強く残っています。そのため、価格が急激に引き上げられた際に、心理的な違和感が生まれやすいのです。
この点から見ると、今回の価格改定に対する反発は、値上げそのものよりも、価格と期待のギャップに起因しているという見方もできます。
SLGW003については、設計思想や9SA4ムーブメントの特徴を別記事「【2025年最新】グランドセイコーSLGW003が買えない理由と入手方法を徹底解説!」で詳しく解説しています。
なぜ今、グランドセイコーは値上げしたのか【為替・製造背景の整理】

価格改定に対して違和感を覚えるとき、その理由を一つに決めつけてしまいがちです。しかし、グランドセイコーの値上げを理解するためには、為替、製造体制、そして海外市場との関係という複数の視点から整理する必要があります。ここでは、それぞれを切り分けながら、事実ベースで背景を確認していきます。
円安と価格改定の関係を冷静に整理する
近年の円安が、グランドセイコーの価格改定に影響を与えている要因の一つであることは否定できません。 2022年以降、円相場は長期的に水準を切り下げ、海外通貨に対して円の価値が低下する状況が続いてきました。
ただし、重要なのは為替と価格改定が単純に連動しているわけではないという点です。 為替は日々変動しますが、時計の価格は年単位の事業計画に基づいて決定されます。 実際、円安が急速に進行した直後に、即座に価格改定が行われたわけではありません。 一定の時間差を伴いながら、段階的に調整されてきたことが分かります。
| 年 | 為替の主な傾向 | 価格改定の動き |
|---|---|---|
| 2021年 | 比較的安定 | 大きな価格改定なし |
| 2022年 | 急激な円安が進行 | 即時的な改定は行われず |
| 2023〜2024年 | 円安水準が継続 | モデルごとの段階的な調整 |
| 2025年 | 変動が落ち着く調整局面 | 対象モデルを絞った選別的改定 |
また、仮に為替のみが価格改定の理由であれば、すべてのモデルが同程度に値上げされるはずです。 しかし、前章で確認した通り、実際の改定幅にはモデルごとに大きな差があります。 この点からも、円安はあくまで複数ある要因の一つであり、 唯一の理由ではないと捉えるのが自然でしょう。
国内製造ブランドならではの事情
グランドセイコーの大きな特徴は、ムーブメントから組み立て、調整に至るまでを国内で一貫して行っている点にあります。岩手県の雫石、長野県の信州という二つの拠点は、単なる製造工場ではなく、技術と思想を体現する場所でもあります。
この体制を維持するためには、継続的な設備投資と人材育成が欠かせません。機械式やスプリングドライブに限らず、9Fクォーツにおいても、高精度を保つためには専用設備や熟練した技術者が必要です。
さらに、新世代ムーブメントの開発や、品質基準の維持には長期的なコストがかかります。これらは短期間で回収できるものではなく、ブランドとして将来にわたって製品を提供し続けるための基盤投資と言えます。価格改定には、こうした見えにくい部分の負担も含まれていると考えられます。
海外市場との価格調整という視点
もう一つ見落とされがちなのが、海外市場との関係です。近年、北米や欧州を中心に、グランドセイコーの評価は着実に高まっています。デザインや仕上げ、ムーブメントの独自性が評価され、現地の高級時計市場でも存在感を強めています。
その結果、日本国内価格と海外価格の間に差が生じやすくなりました。価格差が大きい状態が続くと、地域間での買い付けや流通の歪みが生じ、ブランド全体の価格体系が不安定になります。
こうした状況を避けるため、国内価格を世界水準に近づける調整が行われたと見ることもできます。日本市場だけを切り取ると急激に感じられる値上げも、グローバルな視点では段階的な調整の一部である可能性があります。
値上げ後のグランドセイコーと、どう向き合うべきか【所有者・検討者別】

価格改定という事実を前にすると、「どう判断すればよいのか分からない」と感じる人も多いかもしれません。ここでは、すでにグランドセイコーを所有している人と、これから検討する人、それぞれの立場から、冷静に向き合うための視点を整理します。
すでに所有している人が知っておきたいこと
すでにグランドセイコーを手にしている場合、今回の価格改定が直ちに日常使用へ影響を及ぼすわけではありません。時計そのものの性能や品質が変わるわけではなく、これまで通り使用し続けることができます。
むしろ注目すべきは、メーカーが継続的にブランド運営へ投資している点です。価格改定によって得られる余地は、将来にわたる修理体制やメンテナンス品質の維持にも関係します。長期使用を前提とした時計において、こうした体制が保たれることは重要な要素です。
また、定期的なメンテナンスやオーバーホールは、価格改定の有無にかかわらず必要になります。価格だけに意識を向けるのではなく、「これからも安心して使い続けられる環境が維持されているか」という視点で捉えることが、所有者にとっては現実的と言えるでしょう。
【2025年最新】グランドセイコーのオーバーホール持ち込み完全ガイド:正規価格の目安と後悔しないサービスの選び方
これから検討する初心者が混乱しないために
初めてグランドセイコーを検討する場合、「以前より高くなった」という情報だけが先行すると、不安を感じやすくなります。ただし、価格が上がったからといって、すぐに不適切な選択になるわけではありません。
大切なのは、モデル選びの基準を整理することです。ムーブメントの種類、ケースサイズ、使用シーンなど、自分の使い方に合った条件を一つずつ確認していくことで、価格に対する納得感は変わってきます。
また、すべてのモデルが大幅に値上げされているわけではない点も重要です。価格帯や仕様によって状況は異なるため、特定のモデルだけの印象で全体を判断しないことが、冷静な検討につながります。
実際に購入を検討する際は、購入先による違いも重要な判断材料になります。別記事「【2025年最新】グランドセイコー どこで買う?正規店3種と中古・並行のリスクを徹底比較」も参考にしてください。
値上げという事実をどう捉えるか
値上げをどう受け止めるかに、正解はありません。否定的に感じる人もいれば、ブランドの方向性として理解する人もいます。重要なのは、感情だけで判断せず、背景や事実を知ったうえで自分なりの考えを持つことです。
価格改定は、ブランドがどのような立ち位置を目指しているのかを示す一つのサインとも言えます。それを踏まえたうえで、「自分にとって必要かどうか」「長く付き合いたいと思えるか」を考えることが、後悔の少ない選択につながります。
まとめ
「グランドセイコーは値上げしすぎなのか」という問いに対し、公式データを基に整理すると、確かに一部モデルでは大幅な価格上昇が行われていることは事実です。特に9Fクォーツを中心としたエントリーラインの引き上げは、長年親しまれてきた価格イメージとの乖離を生み、「しすぎ」と感じさせる要因になっています。
一方で、すべてのグランドセイコーが同じ文脈で語られているわけではありません。
SLGW003のように、設計思想や作り込みを前提としたモデルは、価格帯が高くても強い違和感を持たれにくい傾向があります。この違いは、値段そのものではなく、購入前に共有されている“期待値”の差によるものだと考えられます。
今回の価格改定は、単なる一律の値上げではなく、ブランド全体の立ち位置を再定義する過程の一部とも受け取れます。
だからこそ大切なのは、「高くなったかどうか」だけで判断するのではなく、そのモデルが自分の価値観や時計観と合っているかを冷静に見極めることです。
正しい情報を知り、背景を理解したうえで選ぶことで、グランドセイコーはこれからも長く付き合える存在になり得ます。本記事が、その判断の一助となれば幸いです。
グランドセイコーの価格に関するよくある質問(FAQ)
- グランドセイコーの最新の値上げはいつ実施されましたか?
-
直近では、2025年11月4日に日本国内向けの価格改定が実施されています。主に9Fクォーツを搭載したモデルや一部レディースモデルが対象となっており、すべてのラインが一律に引き上げられたわけではありません。
- なぜ「値上げしすぎ」と言われることが多いのですか?
-
一因として、過去に「比較的手が届きやすい」と認識されていたエントリーラインの価格が、短期間で大きく変化した点が挙げられます。価格そのものよりも、従来のイメージとのギャップが強い違和感につながっていると考えられます。
- 今後もグランドセイコーの価格は上がるのでしょうか?
-
将来の価格改定について公式な予告はありません。ただし、為替環境や原材料費、世界市場での価格調整などの要因から、今後も状況に応じて見直しが行われる可能性は否定できない、という見方もあります。
※あくまで一般論であり、具体的な時期や対象モデルが決まっているわけではありません。
- スプリングドライブやメカニカルモデルも値上げされていますか?
-
2025年11月の価格改定では、多くのスプリングドライブおよびメカニカルモデルは対象外となっています。ただし、過去には別のタイミングでこれらのラインが改定された例もあり、改定の有無は時期ごとに異なります。
- 値上げ後でもグランドセイコーを検討する価値はありますか?
-
価格が上がった一方で、ムーブメント設計や仕上げ、製造体制といった本質的な部分に大きな変化はありません。最終的には、「価格」ではなく自分がその時計に何を求めているかを基準に判断することが重要だと考えられます。
出典・参考資料
- グランドセイコー公式サイト
https://www.grand-seiko.com/jp-ja - グランドセイコー公式ニュース・価格改定に関する告知
https://www.grand-seiko.com/jp-ja/news - グランドセイコー 公式製品情報(各モデルの税込定価・仕様)
https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections - セイコーウオッチ株式会社 企業情報・製造体制に関する公開資料
https://www.seikowatches.com/jp-ja/company - 為替データは、日本銀行、ECODB、77銀行等のデータを参照しています。
※本記事に掲載している価格情報は、2025年12月時点でグランドセイコー公式サイトおよび公式発表をもとに整理しています。
※価格や仕様は今後変更される可能性があるため、最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。

